広告効果測定

特徴

NRIシングルソースの全体像

野村総合研究所(NRI)では、独自の「シングルソース調査データ」により、広告の効果測定をいたします。

シングルソースデータとは、同じ調査対象者に対し、継続的に「メディアへの接触状況」を聞き続けるのとともに、購入意向などの「顧客ステップ」を聴取するものです(図1)。

顧客ステップは、広告出稿の事前と事後の2回、同じ人に調査します。これまで、広告出稿の前後を異なるモニタで調査することはありましたが、同じ人に調査することで「テレビ広告に触れると商品認知が高まるか」、「テレビ広告とWeb施策にクロスメディアで触れると購入意向が高まるのか」など、態度変容の原因が正確に分かります。

また、これまでのように、広告認知者=接触者と定義した手法では、「関心があるから広告を認知してしまう」ことが多く、広告のPDCAサイクル構築に最も重要な、「広告への実際の接触者」を捉えることができませんでした。

NRIのシングルソースでは、回答者はどんな行動をしていたかを答えるだけです。その行動の先にどの企業の広告や記事が含まれていたのかは、NRIが保持するデータと紐づけしていますので、ひとりひとり正確な広告への接触が捉えられるのです。

「差分の差分」を用いた分析手法

効果の算定方法は、「差分の差分」という手法を利用しています。

これは、該当する広告に触れた人々(接触群)と広告に触れていない人々(非接触群)に分け、広告出稿前後で顧客ステップがどの程度変化するかを比べる手法です(図2)。そして、テレビCMの効果を端的に示したのが図3です。

ある飲料製品で実施したキャンペーンの事例で説明しましょう。このキャンペーンでは、テレビCMといくつかのメディアで露出を図りましたが、テレビCMがどのように効果をあげたのかを分析します。

まず、出稿後のオレンジ色の数字「24.9%」がテレビCMに触れた人(接触群)の購入意向です。しかしこの商品は、今回のCMが放送される前から一定の購入意向を保持しており、それが事前の数字「21.4%」です。ここから今回のテレビCMは、事後の「24.9%」から事前の「21.4%」を引いた、差分「+3.5%」の効果があったと考えられるのです。

加えてここで、テレビCM以外のメディアも使った、あるいは季節の変動など外部環境の変化もあった、といった条件を考慮するため、テレビCMに接触しなかった人として、緑色の数字(非接触群、コントロール群ともいう)を勘案します。

このテレビCMへの非接触群では、出稿前の購入意向「17.4%」から、出稿後に「17.8%」まで、差分「+0.4%」の変化がありました。これの変化は上記のような理由や競合の出稿状況など影響が考えられますが、少なくともテレビに触れなくても+0.4%変化していた、と読み解くことができます。

以上の要素を考慮して、今回のテレビCMは、接触して変化した+3.5から、非接触で変化した+0.4のさらに差をとり、(+3.5)-(+0.4)=+3.1 の純粋な効果があったと定義することになります。

非常に単純な概念ですが、これはNRIのシングルソースではじめて可能になる分析です。同じ人々に出稿前後で調査し、かつその人々が接触群になるのか非接触群になるのかを日々の行動から算定することは、単なる調査では導き出せないからです。

購入意向や利用意向は、純広告の影響だけで変化するわけではありません。戦略的PRはもちろん、純粋な記事、季節による影響、法律上の変化など、モニタの行動接点をすべて把握することにより、影響を分離して分析可能です。

この事例は購入意向で分析していますが、広告の役割はそれだけではありません。実際の購入やサイトへのアクセスなどの「実行動」はもちろん、 「もう少し調べてみたい」、「次の検討時の候補にいれたい」といったような、生活者の気持ちを動かせたかどうかまで目標変数は自由設定できるため、様々な業種や目的に活用できます。

メディア別の効果を比較

テレビCMの効果が明らかになったら、続いて他のメディアです。表4は、同じ飲料の事例の効果を表したものです。表の1行目のテレビの行の創出効果の「+3.1%」が先ほどの「テレビCMの効果(差分の差分)」です。

これを各メディア毎に集計した結果が、創出効果(高さ)の列となります。こうすると、どのメディアが目標関数に効果が大きかったのか(今回は購入意向)がわかります。

また、広告はどの程度生活者へ届いたかも重要な要素であり、それがリーチ(底辺)という列です。これによりメディア毎の到達度合いがわかると同時に、これに先ほどの創出効果を掛け算すると、総効果(面積)、つまり世の中全体への影響が算出できるのです。

先ほどのテレビCMの行で見てみましょう。リーチの74.4%に、創出効果である差分の差分+3.1%を掛け算すると+22.9‰となります。‰は1000分の1の単位で、見やすくするために桁をあげているだけです。この22.9%に本調査のモニタの数(関東の20~59歳、約2300万人)をかけると、+53万人ということになります。この53万人というのが「今回のテレビCMで“新たに”創出された購入意向者」ということになるのです。

さらに、かかった費用をこの数字で割れば、一人の新しい購入意向を生み出すのにかかった費用(ROI)となります。実際のROIの算定には、複数の目標変数への影響やクロスメディア効果の分離、など考慮する点もありますが、ひとつの目安として捉えることが可能となります。

クロスメディアの効果測定

各メディア毎の効果が測定されたら、次はクロスメディアの効果を分析します。まず、図5の左側のベン図をご覧ください。それぞれのメディア毎にどのような接触状況になっているのかが正確に把握できます。

クロスメディアにより創出効果が高まることを狙うのであれば、できるだけ重なるようにメディアプランをつくり、各メディアがリーチを補完し合うようにするためには、重ならないプランが必要となります。

続いて、右側のベン図はそれぞれの象限における、効果を示しており、今回は事前、事後の購入意向を示しています。

テレビCM単体では、6.2%の上昇だったにも関わらず、交通広告と重なると7.6%の上昇。さらに雑誌も重なることで、12.2%の効果が認められました。

最適な出稿配分の算定

クロスメディアの効果まで分析できると、最終的には、出稿の最適配分を算出することが求められます。NRIではリーチのシミュレーターはもちろん、各メディアに触れた場合の効果についても、多くの商品・サービスの調査結果から推定することができます。これまでと同じような効果があると仮定した場合、どのメディアにどのような形式で出稿すれば総効果が最大化するか、具体的に算出することが可能です。

図6はある化粧品の事例で、予算の2億円を(具体的なビークルを選定した上で)それぞれのメディアへ配分し、効果をシミュレーションした結果です。この場合は、テレビCM60%、雑誌27%、Web13%というのが最も効果が高いと算定されました。

実際には、あらゆるメディアの配分可能性から最適解を求めるのではなく、いくつのかの条件をベースにケースシミュレーションすることが多くなりますが、これまでともすれば「担当者の感覚」で配分していた出稿比率を、数値からなる根拠を基に決定することが可能となります。

次の広告戦略の検討

ここまでは、メディアの効果や配分などを中心にご案内しました。ここで、シングルソースの結果をどのように次に活かすかをご案内します。

ターゲット別の評価

各メディアごとの効果を、性年代といったセグメントはもちろん、独自に設定したセグメントで分析することも可能です。そのため、今回の広告の狙いどおりのターゲットで効果があったのか、想定外のターゲットで効果があったのか、など次の戦略立案のインプット情報として利用できます(図7)。

クリエイティブへの示唆

これまでの導入では、広告出稿における「量」や「出し方」へ適用が多くみられましたが、シングルソースは広告の「質」、つまりクリエイティブ素材の評価にも活用できます。

クリエイティブ素材を評価する場合は、当該の広告クリエイティブが伝えている項目や要素を中心に、認知状況を測定します。そしてそれぞれの項目の「認知者 - 非認知者」で、購入意向がどう変化したのかを分析します。これはこれまでの「メディア接触 - 非接触」と同じ考え方です。実際にクリエイティブの評価をした事例が、次の図8です。

左図では「●●製法の採用」というメッセージを認知している群(認知群)とメッセージを認知していない群(非認知群)で、購入意向の変化に13.8%-6.5%=7.3%と差がつきました。これを他のメッセージと比較したのが右図になります。これらの結果から次回のクリエイティブでは、「●●製法」というメッセージを強く打ち出すことが重要と読み解けるため、実際にクリエイティブを変更し、購入意向の創出に繋げることができるのです。

重要なイメージ項目の選定

広告の一つの役割に、「イメージの醸成」が挙げられます。その商品・サービスにとって本当に重要な項目は何か、これもシングルソースから分析することが可能です。具体的には図9をご覧ください

(図9):イメージ保有率と、その保有者の購入意向の関係

横軸に各イメージの保有率、縦軸にそのイメージを持っている人の購入意向をプロットしています。右にいけばいくほど一般に知られている項目であり、左にいくと特有のイメージになるため、グラフは通常右肩下がりになります。次にこれらの有意検定をおこない、この曲線より右側に出現する項目が、購入意向に影響のあるイメージ項目となるのです。

上記の例では「信頼できる」「自分向け」といったイメージが購入意向に影響する項目と推測できるため、次回のクリエイティブでは、特にこれらのイメージを醸成するように変更することで、購入意向の創出に繋げることができるのです。

豊富な実績、経験

  • 2006年から事業を開始し、2008年より有償によるサービス提供を開始しました。これまで幅広い業種の140社もの企業にご活用いただいており、リピート率は9割を超えています。
  • 調査実績は年間で1,000件を遥かに超えます。そのため、幅広いノルム値の提供が可能となります。

ブラックボックス化しない分析

  • 独自のオリジナルデータ&分析サービスでは、調査方式や分析ロジックをブラックボックス化(非公開)にする企業が多い中、すべて開示しています。
  • 差分の差分という比較的わかりやすい手法を用いることで、ご依頼企業担当者の納得感、満足度も高く、他の事業部への情報共有についても非常にスムーズに展開できます。

高い中立性とコンサルタントとしての使命

  • 第三者機関として高い透明性の中で、調査、分析いたします。そのため、成功/失敗の本質的な原因を捉えることで、より効率的で有効なプロモーション施策へのご支援が可能となります。
  • データそのものは何も語ってくれません。複数のコンサルタントがお客様と一緒になって、数字から得られる示唆を読み解きます。
  • プロモーションの専門家だけでなく、各業種毎にコンサルタントを抱えており、発見された課題に合わせたご支援を提供することが可能です。

迅速な報告と継続的なご対応

  • プロモーションの効果測定は次の広告戦略に利用いただけるかがカギとなるため、報告はお客様の調査が終了してから10日前後でご案内いたします。
  • 対象のキャンペーン施策につき、報告、納品で終了するのではなく、追加のご分析や次施策の支援など、継続的にご支援いたします。また、複数回ご利用いただくことで得られた知見についても、ご案内いたします。

安価な価格設定

  • 通常、シングルソース調査は莫大な費用がかかります。しかしながら、メディア接触データについて、全社様で共有することができるため、1社様あたりのご負担額を抑えることが可能となりました。
  • また、定期的にご活用いただくことで、年間の割引や複数ブランド利用による割引もおこなっております。
  • 継続的にご活用いただくことで回収するビジネスモデルのため、通常のコンサルティングの同様の水準・サービスを提供しております。