2019年7月 1日

-マーケターが押さえておきたい効果的な広告の使い方- 【ターゲットメディアとしてのラジオ広告の可能性】

ラジオは「オワコンメディア」と言われることもあるが、ラジオ広告の広告費をみると、長期的なトレンドでは減少傾向にあるが、2010年以降は、ほぼ横ばいで推移している。根強いファンも多く、広告媒体としての地位を保っている。また、インターネットを経由してラジオ番組を放送する「radiko」のサービスは拡大しており、新しい広告出稿の形態も開始された。今回は、ラジオ広告に着目して、広告出稿の可能性を探っていきたい。

ラジオやradikoの接触率をみると、radikoのみの接触者も多い

NRIが実施しているシングルソースデータの調査から、ラジオとradikoの接触者の割合を整理したものが図1である。

ラジオについては、すべてのラジオ放送の中で、月間あたりの平均聴取時間を調査しており、「月10時間以上」の聴取者を接触者として定義した。月10時間以上であれば、ある程度、定期的に聴取をしている可能性が高いと判断して、この水準を採用した。また、radikoの場合は、聴取時間までは調査していないが、インターネットのサービスとしての利用状況を調査しており、radikoを利用していると回答した人を接触者として定義した。

この結果をみると、ラジオの接触者率は9.7%、radikoの接触率は14.3%となっている。重なりの状況を整理してみると、ラジオ単体の接触者は5.7%、radiko単体での接触者は10.3%、両方とも接触している人が4.0%となっており、radikoだけで接触している人の割合が多くなっている。

図1 ラジオとradikoの接触割合

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出所)NRIアンケート調査(関東20~69歳、2018年10月~2109年5月実施)

ラジオと比べてradiko接触者は女性や若年層の割合が多く、世帯年収は高い傾向

ラジオ、radikoのそれぞれの接触者の特徴をみると図2のようになっている。

男女比でみると、ラジオは男性中心の媒体であるのに対し、radikoは女性の割合が39%となっており、比較的、女性の利用率が高いことがわかる。また、radikoの場合は平均年齢・既婚率が低いため、若い人の接触率が高いことがうかがえる。

一方で平均世帯年収は、ラジオ接触者よりもradiko接触者の方が高くなっており、単純に若い層が多いということだけが特徴ではない。ある程度、収入が高い層における利用率が高いとも考えられる。

さらに、それぞれの層のテレビ視聴時間(1日あたりの平均視聴時間)をみると、ラジオ接触者の場合は4.8時間であるのに対し、raiko接触者の場合は5.0時間と長くなっている。生活者全体の平均テレビ視聴時間は4.3時間であるため、両方とも、平均と比べるとテレビの視聴時間は長いが、特にradiko接触者では顕著である。radiko接触者の場合は、テレビ広告とも接触可能性が高いと考えられ、radikoとテレビのクロスメディアで出稿することでフリークエンシーを高める効果が期待できる。

図2 ラジオ接触者・radiko接触者の特徴

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出所)NRIアンケート調査(関東20~69歳、2018年10月~2109年5月実施)

飲料・食品、医薬品などの分野では効率的にターゲット層のリーチを獲得できる

radikoは「ラジコオーディオアド」という新しい形での広告出稿の実験を開始した。ライブ配信の広告枠で、聴取者の特性に応じて、広告素材を切替えるものであり、よりターゲティングされた広告ができるようなった。ラジオ、radiko接触者の消費実態の特徴をみることで、ラジオ広告に適した消費財の分野を探ることができるため、それぞれの接触者の消費行動の特徴を図3に整理した。

図3における棒グラフは、各消費財の購入率・利用率について、生活者全体の平均値を表している。2つの折れ線グラフは、平均的な購入率・利用率に対して、ラジオ接触者、radiko接触者が、どのくらい購入率・利用率が高く(低く)なっているのかという「差分」(右軸)を表している。この折れ線グラフの値が、右軸の「0%」ラインを超えている消費財がターゲットに対して効率的にリーチ可能なものである。言い換えると、ラジオやradikoにおける広告として適した消費財といえる。

ラジオとradikoは概ね同じような傾向にあり、飲料・食品などの購入・利用率で平均値より高いものが多く、広告出稿の分野として適している。特に、インスタント食品などは購入率が高く、ラジオやradikoにおける広告が非常に適した消費財である。一方で、スキンケアやエステなどの美容・健康系の消費財・サービスの場合は、ターゲットに対してリーチしにくいといえる。

ラジオとradikoで特徴が異なるものとしては、医薬品があげられる。ラジオでもリーチしやすい分野ではあるが、radikoだとさらにターゲットのリーチが獲得しやすい。また、radikoの場合、資産運用、カードローン、ゲームソフト、賃貸住宅などのターゲット層との親和性が高いことがわかる。このように接触者の特徴に応じた分野の広告を出稿することで効率的にターゲットのリーチを獲得することができる。

図3 ラジオ接触者・radiko接触者の消費行動の特徴

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出所)NRIアンケート調査(関東20~69歳、2018年10月~2109年5月実施)

ラジオは自動車の車内で聞くことが多いなどの理由から、比較的、利用者の特徴が明確であり、ターゲット広告として利用しやすいという特性がある。今後、radikoのサービスが充実すれば、消費財の分野によっては、よりターゲットの広告が出稿しやすくなることが考えられる。今回提示したようなラジオやradiko接触者の消費行動の特徴データなどをもとに、ターゲットメディアとして、今後も活用することが期待される。