2019年4月 1日
-マーケターが押さえておきたい効果的な広告の使い方- 【効果的なクリエイティブの見つけ方】
2019年第3弾の「効果的なクリエイティブの見つけ方」は、過去のプロモーションを振り返りプランニングの確度を高めるための1つの方法を提案する。
ブランド横断でクリエイティブを分類することで効果的なクリエイティブを探索する
実際にクリエイティブの制作を進めている時には、制作に使える予算、期限、代理店とのやり取り、他部署との兼ね合いなど考慮することが多く、客観的に考えることが難しい。結果として毎回同じ思考フローを辿り、似た雰囲気のクリエイティブになってしまうことも少なくないだろう。距離感を置いて考えることのできるこの時期に、自分以外が担当しているブランドなどとも交えてクリエイティブを比較してみることで、自社のクリエイティブの偏りや、知らなかった成功の法則を探すことを試みることを考える。
本稿では弊社の2018年におけるテレビCMの広告効果測定データから、まず一般的にクリエイティブの特徴にどのような偏りがあるかを見ていく。続いて成功パターンを探索する分析の例を紹介する。
商品・サービス名を音声で伝える割合は1回以下が過半数を占める
今回は大きく分けて以下の2つの観点からクリエイティブを分類した。
- 出演者(どのようなタレントを活用しているか、またどのくらいの時間を占めているか など)
- 内容(どのくらい商品露出があるか、シリーズものかどうか など)
ここでは一般的だと考えられる項目で構成しているが、自社製品の特性や関心に合わせて項目は組み替えればよい。
CM内で商品・サービス名が音声で登場する回数は1回以下が過半数の63.8%を占めており、複数回発声されるケースは少数派となった。タレントに関しては半数以上の66.7%が続投するかたちでクリエイティブが制作されており、完全にタレントを新規で切り換える割合は28.2%に留まっている。またタレントの出演割合の多いものが83.8%を占めている。
自社内でこれらを見るだけでも、例えば「いつものトーンで作ったらいつの間にかタレント露出が多く、商品がほとんど出てこないクリエイティブばかりになってしまっていた」「タレントやシリーズを頻繁に変更しすぎている」といったことに気付く。
図1 クリエイティブの分類(2018年度)
ブランド共通指標により、クリエイティブパターンの評価を行うことができる
もしブランドを横断して比較可能な指標があるならば、これを用いてクリエイティブの分類を評価することができる。以下では2018年における食品のプロモーションのデータを用いて、クリエイティブのパターンを評価したものである。
まず前章で作成した分類を基に、クリエイティブを類型化する。ここでは以下のような3つのタイプを作成した。
図2 食品のクリエイティブのタイプとその特徴付け(2018年度)
「インパクト型」は商品露出が少なく、クリエイティブの多くの尺をタレントが占めているようなクリエイティブのタイプである。「説明型」は逆にタレントの出ている時間が少なく、その分商品露出や商品のシズル演出に用いているようなタイプである。「バランス型」はこれらの中間となるようなタイプである。
これらのデータは弊社の広告効果測定の対象であるため、「商品の購入意向に対する創出効果」によって横断的に評価することができる。
図2 食品のクリエイティブのタイプと購入意向の創出効果(2018年度)
この場合、タレントのインパクト、商品露出やシズル演出に寄せすぎない「バランス型」で平均的に創出効果が大きくなる。逆に「インパクト型」の場合、平均するとうまくいかないケースが多い。ただしこの分析はあくまで平均的な場合であり、インパクト重視だからといって必ずしもうまくいかないわけではない。このようにクリエイティブを類型化し、これを共通指標で評価すれば、次に制作するクリエイティブを議論する材料を与えてくれることがわかる。
ここではクリエイティブの評価軸は、ある程度人間の主観で判断できるものを採用したが、CM動画や画像を解析することで「平均明度」や「カット数」、「タレントの面積のばらつき」といった人間には数値化の難しい軸を追加することができる。これらも交えた上でプロモーションの目的指標による評価を行えば、クリエイティブ制作の議論をより精密化することができるだろう。いずれにしても今後のプランニングの確度を向上させるために、プロモーション活動の評価指標を蓄積しその体系的な理解を深化させることが重要である。