2019年1月 1日

-マーケターが押さえておきたい効果的な広告の使い方-【タイムシフト化する生活者】

2019年もマーケターの方々に広告に関する最新事情を紹介させていただくことになった。今年は「効果的な広告の使い方」と題し、近年、話題になっているトレンドに対して、今後の広告のあり方や効果的な事例を紹介してきたいと思う。

GAFAに囲われる日本人

まず今号では、最近のトレンドとして「デジタルトランスフォーメーション(DX)」について整理しておこう。昨年あたりからビジネスの世界では急激にDXという言葉が使われるようになった。広告宣伝の世界では数年前から、広告のデジタル化は進んでおり、今更という感は拭えないが、改めてDXが広告に及ぼす影響を考えてみよう。
2018年の流行語として「GAFA」が話題になった。デジタルに関連した代表的な巨大企業(Google、Apple、Facebook、Amazon)の頭文字をとったものである。GAFAは、それぞれが個人データを圧倒的な規模で取得することでビジネスを成功させている。日本におけるDXを考える上でもGAFAは重要なポイントとなる。
それでは、実際、日本人は、どれぐらいGAFAに囲われているのであろうか。図1がその結果を表している。Googleを筆頭に、GAFAのそれぞれを高い割合で接触していることがわかる。日本人もGAFAに囲われており、デジタル化が進んでいるといえるだろう。

図1 日本におけるGAFAの浸透率

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出所)NRIアンケート調査(関東20~69歳、2018年10~12月実施)

タイムシフトの本質は視聴態度の変化

生活者のDX化で広告宣伝にとって最も大きな影響は、生活者との接点がデジタル化することである。
デジタルの接点の場合、テレビCMのような従来型のマス広告と比べた大きな違いは、生活者が、いつでも、どこでも、自由にこれらの媒体に触れることができることである。例えば、デジタルにおける「テレビ番組の見逃し視聴(配信)」の場合、流されているコンテンツはテレビとデジタルで差はないが、生活者の接し方が大きく異なる。
代表的なタイムシフトの媒体の浸透率を整理したものが図2である。ドラマなどの見逃し配信をしている「TVer」、映画やアニメなどを中心に提供している「amazonプライムビデオ」、好きなラジオ番組をいつでも聴ける「radiko」などは、すでに10%の人が利用している。大量の雑誌の中から好きなものを自由に見られる「dマガジン」も雑誌におけるタイムシフト媒体を考えられるかもしれない。この浸透率は5.1%である。

図3 タイムシフト媒体の浸透率

000268_image2.png出所)NRIアンケート調査(関東20~69歳、2018年10~12月実施)

テレビなどのマス広告と同時に、このようなタイムシフト媒体を活用することで、生活者との接点を獲得することも可能だろう。ただし、媒体(接点)の変化が「生活者のDX化」の本質ではない。テレビからWebの見逃し配信などのタイムシフト媒体に接触することが重要なのではなく、タイムシフトをしてコンテンツを楽しむというライフスタイルの変化こそが考慮しなければならないのである。単純にテレビ受像機からデジタルへ出稿を変えるだけではなく、クリエイティブについても変えることが重要である。

「ながら視聴」を強く意識した広告を

また、DXの拡大は、従来のマス広告との「接し方」という点でも生活者に変化をもたらす。テレビからGAFAに代表されるデジタルに接点が変わるだけではなく、テレビを見ながらGAFAにも接触するというスタイルが当たり前になる。
テレビを見ながらスマートフォンをいじり、CMになるとFacebookの書き込みをし、つまらない番組になるとAmazonで買い物をしながらテレビをみるというような接し方に変わってきている。その結果、図3のような変化が起こっている。
各メディアに接触している人においてクリエティブの認知率が減少している。テレビCMに10回接触した人の認知率は2012年には36.3%であったものが30.4%に減少し、トレインチャンネルなどの車内ビジョンの広告認知率も路線利用者あたりで10.0%が6.5%に減少している。いずれも、テレビをみながらPCを操作したり、電車に乗りながらスマートフォンをいじっていることなどが影響していると考えられる。
この傾向については今後も強まることは変えられないだろう。広告主としては、このような生活者が当たり前になることを前提にクリエイティブを作成することなどが求められる。具体的には、番組からCMに入った最初の数秒で生活者に注視してもらえるようなCMを作成したり、小さな車内ビジョンの画面でも生活者に覚えやすいクリエイティブを作成することなどが考えられる。

図2 クリエイティブ認知率の時系列変化

    テレビCMの認知率          車内ビジョンの認知率          動画広告認知率

     (10回接触時)          (路線利用者あたり)

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出所)NRIアンケート調査(関東20~69歳)