2022年9月 7日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

戻る、戻る、戻る...コロナ禍前の時間の過ごし方への回帰は本格化

テレビの視聴時間はコロナ禍で増えたが、すでに元の水準に戻った

コロナ禍でメディアの利用が大きく変わったことは、以前インサイトシグナルの月次トラッキングで観測・紹介したことがある。繰り返す波の中、いまだ収束の兆しは見えないながらも、行動制限なしの夏休みなど生活の平常化が進む2022年、メディアの利用はその後どうなったか見てみよう。

図1:メディア利用の推移marketing_v94_1.jpg

 

まず、テレビ視聴時間は最初の緊急事態宣言で大きく伸び、その後はコロナ禍前より高い水準を維持していたが、2022年春にはコロナ禍前の水準に戻った。テレビ視聴時間は電子番組表での回答に基づく番組視聴実態ベースだが、年末年始と東京オリンピックでスパイクが立つなどかなり実態が反映されたものとなっている。

Webは主要サイトの週当たり接触数で見ているが、2020年夏にピークを迎えたのち、高位安定している。

新聞はコロナ禍を景気に減少スピードが加速して止まらず、デジタル化が進む。雑誌は「おうち時間充実」トレンドを受けて2020年の後半は水準回復していたが、その後徐々に減少してやはり元の水準に戻った。

電車は最初の緊急事態宣言で大きく減少。その後回復したものの、コロナ前の9割程度の水準で安定し、テレワークの定着をうかがわせている。

巣ごもりレジャーや「密を避けた外出」は一度伸びた後縮小。余暇活動もある程度は回復

余暇活動についても、一定割合が戻ったようだ。まず、オンラインレジャー・オンライン代替できる趣味では、「ビデオ・DVD鑑賞」がコロナ禍初年の2020年に大きく伸びたものの、その後元の水準に戻りつつある。一方、リアルでの鑑賞も含んだ「映画・演劇・美術鑑賞」は高い水準を維持しており、コロナ禍でコンテンツ鑑賞の趣味が伸びたということは言えそうだ。また、「テレビゲーム」は伸長が続いている。

図2:余暇時間の過ごし方marketing_v94_2.jpg

巣ごもり・密を避けた外出レジャーについては、やはりコロナ禍初年の2020年に伸びたが、こちらもその後、戻った。コロナ禍のはじめのうちこそ、「おうち時間充実」として手の込んだ料理やDIYなどに張り切っていたが、その後長期化するにつれ飽きてしまった、などの人も多いのではないだろうか。一方、「アウトドア、キャンプ」は定着したようだ。

いずれにしても、長期化するコロナ禍で、消費者は感染拡大予防のための自衛をしながら、活動を戻す選択をしているように見える。再始動が本格化した消費者に向け、自衛と活動のジレンマを解消しながら心安く消費を楽しんでもらう、「ポストコロナ」マーケティングのタイミングに来ている。

出所)NRI インサイトシグナル調査 (関東男女20-60代、各回約3,000サンプル)

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 松下東子

NRIマーケティングサイエンスコンサルティング部では、シングルソースデータによる生活者の行動を毎日継続的に収集しております。お客様のテーマや課題にあわせて、データの追加調査や分析をおこない、マーケティング課題解決のお手伝いをいたしますので、こちらより、お気軽にお問合せください。