2022年7月27日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
変わる選択視点、冷凍食品は「便利」から「お店の味」「製法」へ
過熱する冷凍食品市場
コロナ禍で出番の増えた冷凍食品。総務省「家計調査」、二人以上の世帯)をみると、1世帯あたりの冷凍食品の年間支出額は、7,817円(2019年)→8,787円(2020年)→9,441円(2021年)と目に見えて拡大している。そのため、近年ますます食品メーカー・流通各社が生産・販売に力を入れており、トレイ付きの商品や袋が皿になる商品、レンジ調理だけで"冷たく"仕上がる氷入りの商品までもが登場し、利便性がいっそう増している。
さらには、ファミリーレストランの店内にも冷凍食品売り場が登場し、家にいながら海外旅行気分が味わえるメニューで21年度に売上を大きく伸ばしたことが話題となった。かつては、お弁当に重宝されても、家庭の食卓には気が引けると言われた冷凍食品であったが、今や、スーパー、コンビニ、ドラッグストアから宅配、老舗料理店まで、冷凍食品の競争が過熱している。冷凍食品は「仕方がないから」から脱却し、「便利だから」に留まらず、その存在感を拡張しつつある。
単価アップが見込める「お店の味」「製法」訴求
さて、ここで、コンビニでのプレミアムラインの商品(「高級●●」「こだわりの●●」「プレミアム●●」といった商品)の購入状況をみてみよう。カテゴリ別のプレミアムライン商品を買ったことがある人の割合をみると、おにぎり(54%)、サンドイッチ・惣菜パン・菓子パン(40%)、デザート類(37%)、食事パン(36%)が高い。冷凍食品ではこれらの上位カテゴリには及ばないものの、現時点で21%存在する。冷凍食品市場の成長に鑑みると、今後は冷凍食品においても、上位カテゴリに迫るプレミアムラインの購入が期待できる。
また、コンビニでどのような訴求を目にしたときに、プレミアムライン商品を買いたくなるかを尋ねたところ、 「お店の味が楽しめる」「贅沢素材を使用している」「原材料・製法にこだわりがある」が上位を占めた。冷凍食品においても、「お店の味」や「製法」が購買を促進している(図1)。
図1:コンビニプレミアムラインを買いたくなる訴求内容
(各カテゴリのプレミアムライン商品の購入経験者)
上述の訴求内容重視者では、価格アップ許容度も全体に比べて高く、単価増が期待できる(図2)。支出が増加する冷凍食品カテゴリでさらなる売上増を目指すには、「お店の味」「製法」をキーワードに単価アップを図ることが効果的だ。
図2:【冷凍食品・食材】コンビニでのプレミアムライン商品の
レギュラーラインに比べた許容価格(プレミアムライン商品の購入経験者)
出所)NRI インサイトシグナル調査 (2022年5月、関東男女20-60代、N=3,356)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 高橋弓子