2022年5月18日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
コロナ後の住宅は、家族構成別の従来の売れ筋に "プラス1部屋" 訴求を
駅チカより広さ重視へ。テレワーク無関係の就業者でも快適性ニーズが顕在化
コロナ禍の自粛期間を経ておうち時間が増え、また人によっては通勤が当たり前ではなくなる中、住宅に求める条件も変わってきているという報告がみられる。それは具体的にどのような変化で、今後の売れ筋はどうなっていくのか。
賃貸住宅に求める条件に関するアンケートを実施し、勤務形態や家族構成に着目して考察した。(賃貸住宅検討経験者かつ就業者に限定して分析)
図1は、住宅に対して駅徒歩10分以内を求める割合および1DK以上の間取りを求める割合を、コロナ前・コロナ後について勤務形態別にプロットしたものである(単身世帯のみ)。
図1:「駅徒歩10分以内」および「1DK以上*」を求める割合の変化
(単身世帯のみ、勤務形態**別)
N=857
* 「1DK以上」:1DK, 1LDK, 2K, 2DK, 2LDK, 3K, 3DK, 3LDK以上と定義した。
** 「フルリモート」:週5日以上テレワーク、「ハイブリッド」:週1-4日テレワーク、「全出社」:テレワークなし、と定義した。
注)本調査はコロナ前後の2時点調査ではなく、2021年1月時点で「コロナ前に住宅に求めていた条件」「現在、住宅に求める条件」を聴取している。
各勤務形態のプロットがコロナ前後でグラフ左上から右下へと動いていることがわかる。この傾向はテレワーク頻度の高い人(=立地を犠牲にしやすく、かつ家で過ごす時間の長い人)ほど強い。家に「仕事場」を新たに確保したいニーズの現れと解釈できる。
一方で、働き方の変化が小さいとみられる全出社の人でも広さを求める割合が増加している。平日夜や休日に家で過ごすプライベート時間が増えたことで快適性ニーズが生じたとみられる。
なお、コロナによる変化は「テレワークの普及」と絡めて語られやすいが、2021年1月に実施した今回調査時点では全出社の労働者の方が多数派であり、彼女ら彼らの変化にも注視が必要である。
コロナ禍で人気の間取りは家族構成ごとに異なるが、 "プラス1部屋" が共通項
では、具体的にどういった住宅が求められているのか。
家族構成別にみると、単身世帯ではワンルームや1K等の「1部屋」間取りの人気が減り、1DKや1LDK等の「2部屋」間取りにシフトしている。同様に、夫婦のみ世帯では「2部屋」から2LDK等の「3部屋」へ、夫婦と未婚の子世帯では「3部屋」から3LDK等の「4部屋以上」へというように、各家族構成の従来の売れ筋間取りから「プラス1部屋」に遷移していることから、「プラス1部屋」が今後のキーワードになってくると考える。
住宅仲介業の対面営業やDMにおいては、プラス1部屋の家を借りることで趣味を楽しむ空間が作れる、仕事とプライベートのスイッチがしやすい等のセールストークをしてみるのはいかがだろうか。
図2:部屋数***別のニーズ変化(家族構成別)
N=2,204
赤字は減少。緑字は増加。
また、各家族構成で最大の増加セルを水色、最大の減少セルを橙色で塗りつぶしている。
*** 「1部屋」:ワンルーム, 1K、「2部屋」:1DK, 1LDK, 2K、「3部屋」:2DK, 2LDK, 3K、「4部屋以上」:3DK, 3LDK,以上、と定義した。
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 村井智也