2022年4月13日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

コロナ禍で加熱する「冷食」市場、冷めない秘密は商品力

コロナ下での冷食利用の拡大は、テレワーク時の昼食だけに留まらない

昨今すっかり定着したテレワークだが、在宅時に自身や家族の昼食を準備するのは何かと面倒である。そんなときの強い味方が冷凍食品(冷食)で、コロナ禍以降、食卓での存在感が増しているのは皆が認めるところだろう。

NRIの実施した調査でも、23.6%の人が家庭での冷食の利用が増えたと回答した(1)。週に1回以上テレワーク(またはオンライン授業)のある層では、この割合が33.2%にもなる。しかし、増えているのは昼食時の利用だけではない。

図1:新型コロナウイルス拡大後の冷食利用marketing_v77_1.jpg

冷食の利用が「かなり増えた」「増えた」と回答した人に、増えた用途を聴取した結果が図2である。ここでは夕食のおかずが60.9%で最も高く、昼食以外のニーズも高まっていることがわかる。品目別では、それ一品で食事になるチャーハン・ピラフ(44.3%)やパスタ(42.9%)を押さえ、ギョウザの利用が増えたとする人が最も多かった(51.0%)。自宅での食事が中心となるコロナ下において、保存がきき買い置きをしやすい冷食は、様々な場面で重宝されているとみられる。

図2:増えた冷食の用途marketing_v77_2.jpg

コロナ禍が収束に向かっても、冷食市場の盛り上がりは収束しない

では、この盛り上がりは一過性のものなのか。

冷食利用が増えた層に、今後コロナ禍が収束に向かった場合、家庭での冷食利用がどうなると思うか尋ねると、76.4%が「今と変わらない」または「今より増える」と回答した(3)。その理由を自由回答で聴取したところ、便利さに慣れた、改めておいしさを知ったなど、冷食の利便性や品質に言及するコメントが多く挙がった。これまで冷食メーカーが磨いてきた商品力が、コロナ禍をきっかけに実を結んだ結果と言えるだろう。

図3:コロナ禍が収束に向かった場合の冷食利用marketing_v77_3.jpg

現状コロナ禍に収束の目処は立っているわけではないが、冷食市場の盛り上がりはコロナが収まっても続きそうだ。冷食メーカーにとっては大きなチャンスである一方、冷食以外の食品を手がけるメーカーや外食事業者はこれを踏まえ、冷食への対抗軸をきちんと打ち出していく必要がある。

最近はコンビニでの冷食の取扱いが増え、そのときに必要な分だけをすぐ買うこともできるし、家電市場では冷食のために冷凍庫を買い増す(或いは冷凍室の大きな冷蔵庫に買い替える)動きまで出てきており、冷食の弱点の一つだった保存スペースの制約は克服されつつあると見た方がよい。言うは易しだが、冷食と競合する業界に今求められるのは、おいしさや便利さ(及びそれらのコストパフォーマンス)で正面から勝つための商品開発・マーケティングではないだろうか。

出所)NRI インサイトシグナル調査 (20221月、関東男女20-60)

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 白井雄志

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