2022年3月 9日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
白熱するラストワンマイル、「30分以内宅配」は生鮮品購入もそそる
ラストワンマイルの競争に乗り出す料理宅配事業者
料理宅配(出前)事業者がインターネット通販の配送に、続々と名乗りを上げている。出前館は親会社のZホールディングスがアスクルと展開する食品や日用品の配送を請け負っており、ウーバーイーツジャパンもネットスーパーなどの配送代行への本格参入を検討中だという。「ギグワーカー」を組織化した事業者の参入によって配送の担い手不足が緩和され、低空飛行だった日本の食品EC化率が高まるとともに、新たな企業間連携や競争が生じる可能性がある。
食品ネット購入の主役が米・飲料から生鮮品に?
ラストワンマイルサービスで各社がしのぎを削っているのが、お届け時間の短縮である。街中に張り巡らせた小規模拠点からの配達によって、「30分以内にお届け」といったサービスの実現が可能となってきている。
図1:「30分以内にお届け可能」と聞いて宅配サービスを利用したくなる商品
さて、「30分以内にお届け可能」と聞いて、生活者のどの程度が反応を示すのだろう。図1をみると、食事(弁当・惣菜など)では約半数で宅配サービスの利用意向が喚起されている。これに追従するのが生鮮食品(35%)であり、生鮮以外の食品(21%)を大きく上回る。これまで、ネットスーパーや宅配サービスは、主にお米や飲料といった重たい商品で利用されがちであったが、「30分以内宅配」は生鮮品の利用意向を呼び込んでいる。
食料品の配送料が無料になる注文金額の許容額は3,000円まで
お届け時間はさておき、食料品の宅配サービスにおいて「配送料が無料になる注文金額」の許容額はどの程度だろうか。
図2:食料品のネット購入・宅配サービスの「配送料が無料になる注文金額」の許容額
図2で、男女20~60代全体では「3,000円」までがボリュームゾーンである。女性においては、仕事や子育てに忙しい30代で許容額が高い。40~50代だと一段厳しくなるのはリアル店舗の利便性に慣れていることも一因だろう。60代では配送料の設定があることへの抵抗も少なくなく、ややこしい仕組みは避けるべきだ。
配送時間・コストの競争は激化することが見込まれる。関係各社は今のうちから別の差別化要因を用意しておくことが重要である。
出所)NRI インサイトシグナル調査(2021年11月27日、関東男女20-60代、N=3,390)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 上級コンサルタント 高橋弓子