2022年2月16日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

これからの生活者の変化をとらえる新たなセグメンテーションとは?

生活者をとりまく環境は常に変化し続けている。新型コロナウイルス感染症の流行は、かつてないスピードで生活様式を一変させたが、他にもデジタル化や少子高齢化など現代社会には様々な変化要因が存在している。そのような中で、どのようにユーザー・市場を整理(セグメンテーション)して、誰をターゲットにするかは重要な問いである。

変化の大きな時代を生き抜くための『時流変化型』セグメンテーション

従来のセグメンテーションでは、「いまの市場やユーザーがどのようになっているか」という"現時点"に着目して整理を行うのが一般的である。これは、ユーザーの理解という観点では必要不可欠な分析であることは間違いない。一方で、こうした視点のみで市場を捉えていると、生活様式に大きな変化が訪れた際に、新しいニーズを取りこぼしてしまう恐れが生じる。こうした事態に備えるため、今回は新たなセグメンテーション軸として、時流変化型セグメンテーションを提案したい。

『時流変化型』セグメンテーションにより、増えゆく層を確実にとらえ、変化への対応を

時流変化型セグメンテーションとは、これからボリュームが増える層に着目して切り口を設定することである。これにより将来のボリュームゾーンに対して先手を取って施策を打てるため、時代の変化に素早く対応して新たなビジネスチャンスを獲得できる。この時流変化型セグメンテーションは ①増えゆくセグメントの洗い出し ②自社ビジネスへの有効性の検証 というステップで実行していく。具体的な例を見てみよう。

例えば、不動産会社で時流変化型セグメンテーションを行うとしよう。まずは増えゆくセグメントを洗い出す。このとき、自社ビジネスと親和性が高そうなものから洗い出すのが良く、今回は確実にボリュームが増えつつあり、住宅検討の際にも影響を及ぼすであろうSDGs認知(図1)でセグメンテーションを検討する。

図1:『時流変化型』セグメントの例:SDGs認知marketing_v68_1.jpg

 

続いて、このセグメンテーションが有効であるかの検証を行う。図2は、SDGs認知状況セグメントそれぞれにおける不動産会社の利用率を示したものである。これを見ると、「SDGs内容認知層」で利用率が高くなっており、この層をターゲットとして設定することは有望であるといえる。逆に、セグメント間でKPI水準に差がみられなような場合は、ターゲット設定ができないため、良いセグメンテーションとはいえない。

図2:SDGs認知状況×不動産会社利用率marketing_v68_2.jpg

こうした点を踏まえて、時流変化型セグメンテションとして想定されるものと影響を受ける業界を一例として図3に示す。もちろんこれ以外にも多くのセグメンテーションが存在するだろう。大切なのは方々にアンテナを張り巡らせながら、上述の①②のステップを何度も繰り返し、自社にとって最適なセグメンテーションを見つけることである。この時流変化型セグメンテーションを武器に、新たな時代に適したマーケティング戦略を生み出していきたい。

図3:『時流変化型』セグメンテーションの例marketing_v68_3.jpg

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 コンサルタント 淺桐 祐

NRIマーケティングサイエンスコンサルティング部では、シングルソースデータによる生活者の行動を毎日継続的に収集しております。お客様のテーマや課題にあわせて、データの追加調査や分析をおこない、マーケティング課題解決のお手伝いをいたしますので、こちらより、お気軽にお問合せください。