2020年9月 3日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「コロナ期のターゲティングには"パラメータギャップ"を把握せよ」
新型コロナにより、これまで認識していたターゲット像は変化している
コロナウイルス感染拡大も第二波がようやく収まる兆しが見えつつあるが、完全な収束の見通しが立たない。厳しい景況感の中、今まで以上に効率的に失敗のない施策が求められる。本レポートでは、ターゲット像が変化しにくいと考えられる「缶コーヒー」を例に、コロナ期のターゲティング像の変化について解説する。缶コーヒー週1以上購買層(以下缶コーヒーヘビー層)について、コロナ前の2019年3-4月と、コロナ感染拡大後の2020年3-4月を比較した。缶コーヒーのメインユーザーである男性20-50代に絞って比較している。コロナ前後での差分に注目することで特徴を掴むことができる。
図表1 缶コーヒー週1以上購買層のターゲット像 男性20~50代に限定 コロナ前後比較
缶コーヒーヘビー層は、男性40代の比率が高まっている。一方、独身率が高まっており、さらに、消費価値観としてプレミアム消費層と徹底探索消費層の比率が高まっている。どちらも何かを購入するときにこだわる傾向がある層で、以前に比べ「こだわり度」が高まっているといえる。もしかすると、これまでより「お気に入りのブランド」を重視することで、ブランドスイッチが起きづらくなっているかもしれない。
缶コーヒーヘビー層では、情報感度の高いアクティブ層の含有率が増加している
その他では、「アウトドア」「外食」「ドライブ」の実施率が高まっており、ややアクティブな傾向が増している。年収に変化はないが、貯蓄が下がっており、やや出費が多めの層に変化したようだ。
メディア利用の変化をみると、SNS利用率、特にニュースサイトの利用率が増加している。コロナ期にはデジタルメディアの利用は全体的に伸びているが、同じ年代の増加幅よりも、大きく増加している。コロナ前に比べ、缶コーヒーヘビー層は、独身で、こだわり傾向が増加し、さらに、情報感度が高い層が増加していることがわかる
ターゲット像の「パラメータギャップ」を把握し、施策のピントを合わせる
コロナ期にはこれまでターゲットと考えていた層の構成が変化している可能性が高い。缶コーヒーヘビー層は、変化がそこまで大きくない部類に考えられるが、それでもターゲット像は変化していた。今後は、ターゲット像が、これまでと同じ前提で進めるのではなく、最新のデータから再定義することが重要となる。ターゲット像の持つパラメータの「差分」に注目することで特徴を把握し、ズレたピントを合わせる必要がある。そうして初めて、適切なコミュニケーションが可能となる。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 森田光一 主任コンサルタント