2020年8月13日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「出費を抑えた高収入層の『思い切り買い』、家電・自動車・不動産」
コロナ期は、高年収層ほど出費が減り、低年収層ほど出費が増えてい
2020年ももう8月となり1年のうち3分の2が過ぎようとしている。7月30日には内閣府が景気後退局面入りを認定した。今回のレポートでは、景気が悪化する中でも、商品・サービスを売らなければならない企業に向けて、生活者の出費に着目した分析を行った。今、誰のお金が余っていて、何にお金を使いたいのか。
図表1 コロナ期での出費の増減率
図表1を見てほしい。コロナ期での出費の増減を年収別にプロットしている。年収が低いほど、出費が増加する傾向にある。「食費」「光熱費」「ネットショッピング」による出費が増加した。反対に、年収が高まるほど、コロナ期に出費が減少した。外出減による「外食」「交際費」「旅行費」が出費減少の要因として上位に挙げられた。
「年収」と「コロナ期の出費」は逆相関の関係にある。食費などのベースとなる生活費が増加している一方で、外食などの娯楽費が高年収層を中心に減少している。娯楽費や奢侈品への出費が多い高年収層で出費が減少した形だ。
コロナ期に減った高収入層の出費は、思い切って"大きな買い物"に現れる
重要なのは、コロナ期で減った出費の行先だ。今後、購入したい・利用したい商品・サービスについて追加調査したものが図表2だ。世帯年収1,000万円以上、かつ、コロナ期で出費が減少した層を「高収入出費減少層」と定義し、この層の出費傾向を分析した。
図表2 今後、購入・利用したいもの
全体と比較し、差が大きい項目が、この層が出費しやすい項目の候補といえる。「旅行」は当然として、突出して高かったのが「投資」で、全体と比較して1.96倍だった。下がっている株価への再投資に関心があるのだろうか。続いて、「不動産購入」が1.79倍、「自動車」が1.61倍と高く、「家電」も全体を上回っている。高収入層はコロナ期に使えなかった出費の行先として、不動産や耐久消費財などの大きな買い物を想定していることがわかる。我慢した分の『思い切り買い』だ。
本シリーズでは、チョコレートの購入増から「ダイエット」ニーズの増加や、在宅勤務による健康の悩みの変化から「入浴剤などのインバス商品」ニーズの増加などを予測し、的中してきた。今回は、コロナ期で我慢してきた高年収層の出費が、今後、高額商品の『思い切り買い』として出現することを予測する。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 森田光一 主任コンサルタント