2020年6月30日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「巣ごもり生活で拡大する、グルーミング(身づくろい)消費」
音楽・DVD鑑賞や読書など巣ごもりレジャーが伸長。癒しの食志向も健在
5月25日に緊急事態宣言が解除され、街には人が戻り始めたが、長かった外出自粛期間中に、消費者の余暇時間の過ごし方は大きく変化した。図表1は巣ごもり生活真っ最中の4-5月の趣味・余暇活動を前年同時期と比較し、増加の大きい順に並べたものだが、「音楽・映画・DVD等鑑賞」に始まり、「読書」、「ゲーム」まで、見事に巣ごもりレジャーが上位に並ぶ。これまでのレポートでも紹介した通り、インターネットで動画や音楽、ゲームを楽しむ時間が大きく増加したことがうかがえる。他、「グルメ」や「料理」などの項目も上位に入ってきており、「癒しの食」を楽しみたい傾向も健在だ。一方で、「競馬」「パチンコ」などの「密」レジャー、「ゴルフ」「写真撮影」などの外出レジャーは減少している。こうした趣味・余暇活動の変化は、人々の消費にも大きな影響を与える。
図表1 趣味・余暇活動
(前年同時期から増減で変化幅の大きい項目より抜粋)
「とどこおり系」のカラダの悩みにはバスタイム。湯船につかって血行回復、ストレス解消
例えば、外出できない中での「グルメ」「料理」のアップは、自宅でちょっと特別な料理を作るための、スパイスや調味ソースの購買につながるだろう。レシピサイトの閲覧や、レシピ本の売れ行きも良い。また、電子コミックやオンライン配信サービスの利用も好調だ。
さらに、巣ごもり生活が続いた結果、意外なものが伸びることになる。入浴剤などのインバス用品や、スキンケア用品だ。ネットで買い物し、余暇時間はタブレットやスマホに向かって過ごし、仕事もテレワークで通勤がない、さらについつい食べてしまう、となると、身体はいろいろ「滞(とどこお)りがち」になる。血行が悪くなり冷え性に、頭痛・肩こり・腰痛もひどく、マスク着用もあってお肌も荒れ気味、便秘気味、ストレスで心なしか髪も減ってきた...?などのお悩みが、図表2の悩んでいる症状(前年同時期との比較で増加の大きい順)からは見て取れる。
図表2 悩んでいる症状
(前年同時期から+1.0pts以上の項目を抜粋)
そこで解決策として登場するのが、バスタイムだ。ゆっくりと湯船につかって、コリをほぐし、血行改善、新陳代謝を回復する。荒れ気味のお肌もすっきりツルツルに、というわけだ。日頃はシャワーのみで済ませてしまうことが多かったのに、湯船にお湯をはってゆっくりつかるようになったという人も多いだろう。また、時差通勤やテレワークで夕方の早い時間に在宅できるようになり、子どもとのバスタイムが増えた働くお父さんも多いのではないか。リラックスする香りや血行促進・保湿などの効果をうたった入浴剤が伸びるのもなるほどである。まさに巣ごもり期ならではのデトックス志向であり、巣ごもりしていた鳥が、巣から飛び立つためにグルーミング(身づくろい)を始めたといったところだろうか。アフターコロナ期においても、こうした入浴による内側からの美容・健康習慣は一定数残るだろう。少なくとも筆者は、テレワークで悪化した四十肩がラクになるまでは続けたい。
出所)図表1・2ともにNRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 松下東子