2020年5月26日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「『安さ納得消費』が拡大し、テレビに求められる役割が変化」
『利便性消費』が減り、価格を重視する『安さ納得消費』が大幅増加
野村総合研究所では消費者を4つのタイプに分類している。縦軸に価格に関する感度をとり、横軸にこだわりに対する感度をとることで4つの分類に分けている。各消費タイプの割合の推移をみると、2019年4月の時点では、利便性消費が最も多く53%、次いでプレミアム消費が23%となっていた。今年の4月の調査結果をみると、利便性消費が6ポイント減少し、徹底探索消費が4ポイント増加している。
新型コロナの影響で、所得に対する不透明感が高まり、利便性を重視するのではなく、安ければよいという消費価値観が浸透してきたと考えられる。また、プレミアム消費や徹底探索消費など、商品やサービスなどのお気に入りこだわる消費者も微増の傾向にあり、消費行動に対する制限が強くなる中で、消費に対してこだわりを持つ人が増えていることも特徴的な変化といえる。
図表 消費価値観の変化
『安さ納得消費」にとっては、情報源として、テレビの重要性が高まる
各消費スタイル別に「テレビの1日あたりの視聴時間」と、twitter、Instagram、YouTubeの「SNS利用率」の平均値について、2019年4月と2020年4月の値を比較した。生活者全体では、在宅勤務などの影響により、テレビの視聴時間、SNS利用率ともに拡大している。
消費スタイル別でみると、商品・サービスの選択にこだわりを持つ『プレミアム消費』の場合は、テレビの視聴、SNS利用ともに拡大してる。『徹底探索消費』も同じような傾向にある。消費にこだわりを持つ人の場合は、テレビやWebを使って、様々な情報を収集しながら、こだわりを満たしていると考えられる。特に『プレミアム消費」はテレビの視聴時間が大きく拡大しており、商品・サービスのプレミアムな部分をテレビで訴求すると効果的であろう。
最も特徴的なのは『安さ納得消費』のメディア接触の変化だ。テレビの視聴時間は、他の消費スタイルと同様に拡大しているが、SNSの利用率は拡大していない。以前からSNSの利用率は低く、『安さ納得消費』の人にとっては、情報源としてテレビが益々重要になったと言える。今後のテレビ広告では、商品特徴だけではなく、「価格」や「コストパフォーマンス」を訴求することも効果的であると考えられる。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 部長 塩崎潤一