森永乳業株式会社 様

広告効果測定の支援から、マーケティングコミュニケーションのパートナーへ

森永乳業株式会社

事業内容
牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売
創業
1917(大正6)年
導入ソリューション
広告効果測定
導入部門
広告部および各ブランド事業部

20あまりのブランドにおいて、通年にわたってさまざまな広告キャンペーンを展開する森永乳業。同社では2010年からNRIの広告効果測定サービス「インサイトシグナル」を導入しています。シングルデータソースによる精度の高い効果測定が可能となったことから、部門を越えた共通の評価ツールとして広告施策の戦略立案やブランドマーケティングに利用しています。また、将来的には企業広告も含めた全社的なマーケティングコミュニケーションの指針を示す役割にも期待しているといいます。

事例概要

お客様の課題
  • 広告キャンペーンの効果を正確に測りたい。
  • これまでの調査では、広告キャンペーンの前後の変化、微妙な変化が読み取れなかった。
導入の決め手
  • 同じパネルを対象としたシングルソースデータを用いた調査手法であり、信頼性と精度の高い評価・分析が可能。
  • メディア別の効果やクロスメディアによる効果が把握可能。
導入までの流れ
  • 2010年にテストを実施。その後、費用が下がったことや通年利用できる体制となったことで本格導入。現在は20あまりの全ブランドの効果測定に適用。
導入後の効果
  • 広告活動におけるKPIとして活用。PDCAを回すうえでは欠かせない共通の評価指標となっており、円滑な広告戦略立案が可能となった。
  • 導入後6年あまりのデータが蓄積され、ブランドマーケティングには欠かせないツールとなっている。今後は全社的なコミュニケーションマネジメントへの応用にも期待がかかる。

課題と背景

日本第2位のシェアを持つ乳業会社である森永乳業は、牛乳、ヨーグルト、チーズ、バターなどの乳製品をはじめ、ジュース、デザート、ドライミルクなどの育児・栄養食品、介護食と幅広い商品群を扱っています。赤ちゃんからお年寄りまで、すべての世代向けの商品を持っているのが特徴です。年間の売上高は6,000億円規模にものぼり、日本を代表する飲料・食品メーカーのひとつです。

同社が取り扱う商品群には多くのブランドがあるが、その中でも20あたりのブランドが広告活動を展開しています。それを統率する広告部では、マス広告からイベント、CSRの要素を含んだ全社的な案件まで、すべてのコミュニケーションに関わっています。

寺田文明氏が森永乳業の広告部部長に着任したのは2008年。当時は、企業における広告活動がビジネスに効果をもたらしているかどうか、アカウンタビリティが求められるようになりつつあった頃です。森永乳業でも広告キャンペーンの実施後、サンプル数1,000~2,000程度のWeb調査を行うようになりました。

広告キャンペーンの効果は、おおよその傾向しか読み取れない状況が続いていました

「数値があがってくることでキャンペーンごとのおおよその傾向は見ることができたのですが、その数値をどう評価したらよいかは分かりにくかったですね。キャンペーン実施前後に2回調査を実施したこともありましたが、調査対象のパネルが違っていたことで、誤差の範囲内だったり、明確な変化がつかめなかったりと、不満が残りました」と寺田氏は振り返ります。

また、テレビCMを使った大規模な広告キャンペーンでは効果を測れたものの、交通広告や雑誌広告など小規模な出稿では変化が読み取れないという問題もありました。消費者の嗜好が多様化し、きめ細かな広告宣伝、マーケティング活動が必要とされている時代にあっても、広告キャンペーンの正確な効果が読み取れない状況が続いていたのです。

「そうした折、2010年にインサイトシグナルを知りました。同じパネルを対象にキャンペーン前後で調査ができるということに興味を持ったのです。当時はシングルソースデータという手法も一般的ではなかったため、テスト的に一度実施したところ、課題だった前後の変化や微妙な変化も分かり、非常に有効だと感じました」。

森永乳業株式会社
広告部長
寺田 文明 氏

効果

どのメディア、どの施策、どのメッセージが有効だったか具体的にわかるようになりました

広告効果測定の効果を実感でき、年間利用による費用の調整により、通年で調査できる体制が整ったことから、森永乳業では本格導入を決定します。現在では原則としてすべてのブランドでインサイトシグナルを導入し、広告キャンペーンの評価指標に用いています。

「導入後は、具体的にどのメディア、どの施策、どのメッセージが有効だったかまで具体的に分かるようになりました。さらに、クロスメディアの効果も測れるようになったことも大きいですね」。

同社では、広告部、ブランド担当事業部、および広告会社の三者間で広告活動のKPIを設定し、PDCAサイクルを回しています。KPIは、ブランドの認知率や想起率、ブランドイメージを測るマーケティング指標と、広告キャンペーンの認知率、認知した人の購入意向、購買行動とその転換率を測るコミュニケーション指標のふたつのカテゴリに分かれており、インサイトシグナルの調査結果はそのうちのコミュニケーション指標に利用されています。

各キャンペーン後には、NRIのコンサルタントによる報告会も実施し、広告がどのように消費者に影響を与えたか、関係者全員の知見として蓄積されるようにまでなっているといいます。今ではインサイトシグナルは、広告活動全般に欠かせないツールとなっているのです。

活用方法

森永乳業には、チルドコーヒー飲料「マウントレーニア」のような嗜好品から、ファミリーユースの健康志向の食品まで、ターゲットの異なる幅広いブランドがあります。インサイトシグナル導入後は、ブランドを横断する共通の指標で広告効果を測定できるようになったことが大きなメリットといいます。

「率直に言って、以前は結果を検証するたびに都合のいい数字や出典不明の数字が出てきたりしていました。それが共通の指標ができ評価基準が定まるようになると、客観的な根拠に基づいたディスカッションや判断ができるようになります。おのずと社内のコミュニケーションも円滑になり、部署やブランドを横断した見地からいろいろな示唆や気づきが得られるようにもなりました」。

現在では、本格導入から6年あまりのデータが蓄積されたことで、より精度の高いメディア戦略や新規ブランドのメディア選択が可能になっているといいます。

たとえば、若者に人気の「マウントレーニア」は相対的に交通広告が有効であることや、「MOW」のような認知拡大途上の商品はマス広告が有効だということが数値で証明されたのです。

中でも、「マウントレーニア」の交通広告の調査結果は示唆に富んだものでした。朝の通勤時間帯に電車内のデジタルサイネージで「マウントレーニア」の広告を流したところ、電車を降りてすぐの駅前コンビニの売り上げが大幅にアップ。交通広告はテレビCMよりも認知率が低くても、認知から購入意向へ至る転換率や購買行動へ至る転換率はテレビCMの2倍という結果が出たのです。これは、最もタイミングのいいときに広告メッセージが届けば効果があるという「リーセンシー効果」が発揮されたものでした。

長期にわたって蓄積されたデータを活用

また、こうした蓄積されたデータから森永乳業の広告活動全体になんらかの法則的なものが見つけられないかとさまざまな分析を行ったところ、興味深いルールも発見できました。

たとえば、テレビCMのGRPを上げていけば認知率は高まっていきますが、ある具体的な数値まで達すると、その増加率である限界効用が頭打ちになることがわかりました。加えて、調査を重ねることでその頭打ちになるGRP値を年齢別にも把握できるようになったのです。

評価指標が定まり、客観的な根拠に基づいたディスカッションや判断ができるようになりました

こうして蓄積された知見は、たとえば「必要以上のテレビCM出稿を控えることで得られた予算をWebへ回すことで、キャンペーンを一層活性化させる」といった形で有効活用できているといいます。

根拠に基づいた具体的な施策が取れるようになると、テストマーケティングにチャレンジする気風も高まっていきます。スライスチーズの例では、いくつかの地域で集中的に出稿した結果、沖縄県で非常に効果があったことが分かりました。そうしたピンポイントの課題にも、インサイトシグナルはフレキシブルに対応できているといいます。

寺田氏は、こうしたサポート体制も含めた本サービスの価値を次のようにも語っています。「インサイトシグナルの担当者は、コンサルタントとしてマーケティングや企業戦略立案のバックグラウンドをもっています。そのため、いわゆる調査会社による単なる調査データとは異なる、プロフェッショナルの視点からの分析、考察を提供いただけるのです。多くの企業のコミュニケーションリサーチを手がけて得られた統計数値から、ノルム値(過去事例に基づく基準値)を算出して分析してもらえるので、客観的な評価が得られることも私たちのメリットになっています」。

展望

現在、森永乳業では部門の垣根を越え、全社的なお客様との関係づくりに取り組んでいます。それも、「経営戦略から考えられたものではなく、あくまでもお客様視点に立ったコミュニケーションであるべき」と寺田氏は強調します。森永乳業の企業理念は、「乳の優れた力を基に新しい食文化を創出し、人々の健康と豊かな社会づくりに貢献する」というものであり、そのメッセージがお客様一人ひとりに伝わるようなコミュニケーションを目指しているのです。

データと知見を活かした、マーケティングコミュニケーション全般のパートナーとして期待しています

「お客様には、『森永乳業が好きだから、森永乳業のファンだから、ここの商品を買ってみたい』、そう思っていただけるようになりたいですね。そのためには、コミュニティサイトやオウンドメディアにも重点を置いて、個対個のコミュニケーション戦略を考えていきたいと考えています。また、デジタルの世界で進んでいる『アドテクノロジー』の導入についても、マーケティングオートメーションで効率的にお客様にメッセージを届けるというよりも、個対個のコミュニケーションを増幅する方向に使っていくことが正しいと思っています。そうした施策や戦略においても、インサイトシグナルで得られる知見を活用していきたいですね」。

これまではブランド単位での評価を中心に活用されてきたインサイトシグナルですが、今後はより全社的な視点で活用される方向へと、進化しつつあります。

寺田氏はこう総括します。「お客様から見れば、われわれは選択肢の一つでしかなく、われわれが考えるようにはお客様にはメッセージは伝わりません。『お客様から見て、森永乳業のコミュニケーションはどう映っているのか』という客観的な視点を常に持ち続ける必要があるのです。それを可能にするのが、インサイトシグナルで蓄積している客観的なデータと知見と考えています。現在は調査や分析を中心にサポートいただいていますが、メディア販売を背負っておられないメディアニュートラルの立場から、今後はマーケティングコミュニケーション全体のコンサルティングパートナーとしての進化を期待しています」。

コンサルタントのコメント

森永乳業様は、インサイトシグナルのデータを活用して広告のPDCAを回していただいている好例です。広告部だけでなく、事業部や広告代理店など、そのブランドに携わるすべての方々が、単なる広告の○×ではなく、なぜそうなったのか、次回はどのようにすべきなのかを、フラットなデータに基づいて議論、検討されています。
特定のブランドだけでなく、広告展開のあるほとんどのブランドで調査を実施させていただいているため、ブランド間の比較や、年間を通しての広告活動の振り返りもご支援できるようになりました。
継続して調査を実施させていただいているブランドで仮説どおりの結果が出たでたときにお客様と一緒になって喜べるのも、このサービスのやりがいの一つと考えております。(細見ちひろ)

関連情報

森永乳業株式会社

設立
1917(大正6)年
資本金
217億0435万5355円(2012年3月31日現在)
売上高
単体4373億3000万円、連結5782億9900万円(2012年3月期)
事業内容
牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売