2016年2月 9日
国は子育て共働き世帯を救ってくれるのか?
"一億総活躍社会の実現に向けた3世代同居・近居の環境整備の整備"とは
近年では、女性の社会進出が以前より飛躍的に進み、結婚・出産といったライフイベントを経ても、継続して働き続けることが一般的になってきました。国では、このような共働き世代の支援を目的として、"3世代同居・近居の環境整備の整備"を進めています。
この3世代同居・近居の環境整備では、同居のために必要な住宅のリフォーム費用の一部補助や親子世帯の一方がUR賃貸に居住している場合に家賃を割り引く「近居割」の適用など、自治体などの公営住宅を活用した優遇策の適用などが検討されています。
そこで、今回の調査では、近居・同居に関心がある方のプロファイルと政策の認知度について調査しました。
まず、そもそもの近居・同居意向を調査すると、「近居または同居の意向」を示した層は約3割で、「近居・同居の予定がない、わからない」層は4割弱でどちらが多いとまでは言い切れない現状です。
出典)野村総合研究所 2015年11-12月期シングルソースデータ(関東エリア:男女20-59歳:N=2,452)
近居・同居を希望する理由としては、育児・介護や経済的な理由などさまざまなものが考えられます。今回、世帯に児童がいる層に限定して近居・同居を希望する理由を調査した結果が図表2になりますが、近居・同居の理由として最も高かったのは「親の様子が気になる」の50.5%で、次いで「親世帯から子育てのサポートを受けられるから」、「緊急時や不在時に頼りになる」でした。
近居・同居を希望する理由として最も高くなると予想していた「親世帯から子育てのサポートを受けられる」と回答したのは43.3%で、結果的に子育てのサポートよりも親の様子を気遣う動機が勝った形になります。
出典)野村総合研究所 2015年11-12月期シングルソースデータ(関東エリア:男女20-59歳(世帯に児童がいる層に限定して集計:N=193)
世帯内の児童の有無が近居・同居に与える影響を見てみると、大きな差は見られませんでしたが、やはり未就学児がいる家庭では、他のセグメントと比べ近居・同居をしたいと回答する方が僅かながら多いようです。一見、未就学児童・小学校低学年と育児に手をとられる層で近居や同居を望む割合が高くなるものと思われがちですが、実際はそこまでではないようです。
小学校高学年児童ありの世帯では、「同居をしたい」層と「近居/同居をする予定はない」層がどちらも増加しており、「どちらともいえない」と揺れていた層がどちらかに意思を明示している様子がうかがえます。
今回のアンケートからは、理由までは調査できませんが「同居をしたい」理由としては、育児・介護面や自宅の共同購入といった要因が考えられます。
出典)野村総合研究所 2015年11-12月期シングルソースデータ(関東エリア:男女20-59歳:N=2,452)
一方、国土交通省が推進している近居・同居に対する補助金や家賃優遇といった政策の認知度は全体で2割程度と低いものの、児童がいる家庭では政策に関心があると回答する割合は5割程度で、児童なし家庭よりも5ポイントほど高いことがわかりました。
子育て世帯を援助することが目的の政策ということもあり関心度の高い政策ではありますが、世間での認知はまだまだ進んでおらず、引き続き政策を浸透させていく必要がありそうです。
出典)野村総合研究所 2015年11-12月期シングルソースデータ(関東エリア:男女20-59歳:N=2,452)(横内 瑛)