2016年2月 2日
信じる?信じない?血液型別性格診断
血液型別性格診断を信じている人は40%、信じていない人も40%
ついつい気にしてみてしまうという人も多い血液型別性格診断。実は、血液型と性格を関連づけて考えているのは世界の中でも日本だけ、という話もあります。背景には日本人の血液型の構成比がバランスよく分布しているため、という説もあり、なるほど国民の大部分が同じ血液型である場合には、なかなか性格類型としてはなりたちにくいと思われます。日本人の血液型構成比は、A型40%:O型30%:B型20%:AB型10%と言われていますが、インサイトシグナルのシングルソースデータ対象者(関東エリア 男女20-59歳)で見ても、A型37%:O型30%:B型24%:AB型9%となっていました(「わからない・調べていない」と答えた人を除いて集計)。
それでは、血液型別性格診断を信じている人はどれぐらいいるのでしょうか。今回対象者で見ると、全体の40%が「信じている」または「ある程度は信じている」と回答していました。一方、「あまり信じていない」、「まったく信じていない」と回答しているのは合計で39.2%とこれも全体の約40%を占めています。残りの20%は「関心がない」と回答した人たちです。
性・年代別にその傾向を見ると、男女とも30代で信じる割合が高く、男性より女性で信じられている傾向が見られました。ちなみに血液型別では、B型で信じている割合が統計的に有意に低く、その他の3つの血液型では差がない結果となっています。
出典)野村総合研究所 2016年12-1月期シングルソースデータ(関東エリア 男女20-59歳)
統計的に有意差も。血液型別性格は「気にする」ことによって形成?
実際に、統計的に見ても、血液型により性格や行動に違いは見られるのでしょうか。例として、「消費意識」の項目において、血液型別に有意な差が見られるかを確認してみました(最大値をスコアした血液型と、最小値をスコアした血液型の間に差が見られるかを比率の差の検定で確認)。その結果、統計的に有意差が見られたのは、消費意識の32項目のうち以下の5つの項目でした。
出典)野村総合研究所 2016年12-1月期シングルソースデータ(関東エリア 男女20-59歳)
つぎに、血液型別性格診断を信じている人、信じていない人、関心がない人に分けて、この差を見てみました。すると、信じている人に限定した場合には8項目で有意差が見られたのに対し、関心がない人では4項目しか有意にならないという結果になりました。
この結果からうかがえるのは、血液型別性格は「信じる」ことによって形成されている部分も大きいということです。面白いのは、「信じていない」と回答した人に限定したときにもやはり、7項目で有意差が見られたことです。「関心がない」と答えた人よりも「信じていない」と答えた人の方が、血液型別の違いがはっきり表れているということになるのですが、信じていない人の方が、無関心な人よりも内容を「気にして」いる分、影響を受ける割合が高いということでしょうか。
性格診断は公式アカウントへの有効な誘導ツール
さて、このような分析を行ってきたのは、実は企業がSNS上の公式アカウントに対するフォロー/友達登録/いいね!を誘導する際などに、こうした性格診断がツールとして使われるケースが多いためです。今回対象者のうち、SNSを含むインターネット上の診断テスト(性格診断、心理テスト、占いなど)を利用したことがあるかについて、「よく利用する」、「たまに利用する」と回答した人は20.3%、「利用したことはあるが最近はしていない」と回答した人は23.9%で、合計4割以上、SNSを利用していない人を除いて再集計すると約6割の人で利用経験があることがわかりました。そして、当たり前ではありますが、これらSNS上の性格診断の経験は、血液型別性格診断を信じる傾向と親和性が高く、「信じている」層でよく利用されており、SNSの利用傾向とも相まって若者でよく利用されています。
類似の結果としては、野村総合研究所が2015年末に全国20-69歳の3,095サンプルを対象に行ったインターネットアンケート調査では、50.4%の回答者が「クーポンやスタンプなど、特典が欲しいから」という理由で企業の公式アカウントをフォローしているということがわかっています。ただし、それには続きがあり、「クーポンやスタンプなど、特典がほしいから」を理由として企業の公式アカウントに登録した人は、「その企業や商品が好きだから」や「新商品や限定品、イベントなどその企業や商品の情報がほしいから」を登録理由として挙げる人に比べて登録を継続する割合が顕著に低いという傾向が見られたのです。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の占いや性格診断ですが、見てきたとおり日本人は結構好きですし、信じることをあえて楽しんだり、信じることで実際の意識や行動に受けたりする人も多いようです。そして、それゆえに、性格診断を企業のページを登録してくれる人は一定数いると思われます。企業としてはそうしてつながることができた消費者に対し、どのようなコミュニケーションを取っていけば関係を続けていけるか、「こんな人間な私」を楽しむ消費者の心理をもとに考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
(松下東子)