2022年8月24日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「ブランディングに活かしたい、効果的な企業ステートメントの活用法」
企業ステートメントに好感を持っている場合、その企業に対する企業好感度も高い。
昨今、CSRやサステナビリティといった言葉が浸透してきているように、企業は社会への責任を求められている。このような時流の中で、広告に期待される役割として企業姿勢を伝える「企業ブランディング」の重要性は高まっている。今回着目するのは、テレビCMの冒頭や末尾、企業ロゴの片隅に現れる「企業ステートメント」。それ自体が主役となって発信されることは多くないが、少なからず企業ステートメントが紡ぐ言葉は企業好感度や企業イメージ醸成、コーポレートアイデンティティ構築など中長期的な企業価値向上に寄与している。今回はその有効な活用法について提言したい。
NRIのシングルソースデータにて、企業好感度や企業ステートメントの認知度・好感度等について調査した。企業ステートメントはCMで発信していない企業もあるため、その認知のしやすさはCM出稿量に依存することも否めない。そこで今回は、2021年CM出稿量が多く、かつCMにて企業ステートメントを発信している企業24社を対象として分析した。
図1では企業ステートメントに好感を持っている人と持っていない人での、企業好感度TOP2(「とても好き」「まあ好き」を回答)の平均を示している。
図1:企業ステートメント好感有無別の企業好感度
企業ステートメントに好感を持っている場合、その企業に対する企業好感度も高い。生活者は、企業のあらゆる活動を通して、好感を持つことが一般的だが、その一つの方法として企業ステートメントに好感を持ってもらうことは有効であると言えよう。
「信頼性」「親しみ」は企業ステートメントへの好感があると持たれやすいイメージ。
企業ステートメントに好感を持つことは企業イメージにどのような影響を及ぼすか。図2は、企業イメージの保有率を企業ステートメントへの好感の有無別に示している。「信頼性がある」「親しみやすい」等の企業イメージは企業ステートメントに好感を持ってもらうことで保有されやすいイメージであり、これらのイメージ醸成を目標とする場合、企業ステートメントへの注力は有効だ。
図2:企業ステートメント好感有無別の企業イメージ
※調査対象15イメージ中、上位4イメージを抜粋
"日本語で・事業内容を含む・シンプルな構成"で好感を持たれやすいステートメントに。
では、企業ステートメントに好感を持ってもらうためにはどうすればよいか。 "好感を持たれやすい"企業ステートメントを紐解いていきたい。
図3では企業ステートメントの構成要素別に企業ステートメントの好感度を示している。英語の利用はない方が、そして事業内容は含まれている場合の方が企業ステートメントの好感度はやや高いことが分かった。なお、音数と文字数についても同様に企業ステートメントの好感度を算出した。音数、文字数ともに短い方が企業ステートメントの好感度は高い傾向で、シンプルな構成が好まれやすいことが明らかになった。以上、企業ステートメントの好感度の重要性をご案内したが、好感を高めるだけでなく、ステートメントそのものを認知させることも重要である。ただし、企業によっては広告予算が限られるため、出稿量による認知の拡大が難しいことも考えられる。こういった場合、企業ステートメントの「質」を高めることに注力していただきたい。
図3:構成要素別のステートメント好感度
たった一言で企業の全てを伝えることは不可能だ。しかし、短い言葉で示すからこそ、ストレートに伝えられることがある。どんな言葉を選び、伝えるか。生活者の声をもとに導き出すことが重要だ。
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 梅畑友理菜