2022年8月17日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
"テレビCMをそのままデジタルに"では埋まらないミドルファネル
テレビCMの影響力減少とデジタル広告の伸び悩み
プロモーション時のメディア構成を検討する際に、「テレビ&デジタル」が前提となって久しい。各社ごとにデジタル広告の知見も徐々に蓄積されている一方で、まだまだ「テレビ&デジタル」のみでは、生活者の購買ファネルを加速させるには十分とは言えない現状がある。
図1は、10回接触時のテレビCM認知率を時系列で見たものだ。接触回数が同じでも、テレビCMの認知率は下降していることがわかる。2015年までの下降が特に顕著で、その後、現在に至るまでは、横ばいかやや減少している。スマートフォンの普及率と反比例の関係があり、テレビについては、そもそも見なくなった、だけでなく、注視率も減少傾向にあると言える。
図1 10回接触時のテレビCM認知率
一方、図2では、デジタル施策(動画広告)の広告認知率の分布を見ている。すると、広告認知率の平均は4.2%であり、分布を見ても、そのほとんどが広告認知率10%を超えていない。これは、出稿量自体やターゲティングの影響を考慮しても、テレビCMの同事例平均認知率21.3%と比較してかなり低い水準と言える。認知者を分析すると、訴求商品にそもそも興味がないとデジタル広告を見ないこともわかっている。
図2 デジタル(動画)広告の認知率分布
※動画広告:2020~2021年に出稿のあった113事例より作成
ミドルファネルをどう埋めるか
上記の通り、テレビCMの影響力は下がり、デジタル施策は認知率もまだまだ低く、刈り取りでの効果が主だ。すると、図3の通り、テレビ&デジタルでは、購入意向に相当するミドルファネルが埋められていないことがわかる。実際の事例を分析する上で感じることは、テレビとデジタルではできない、というより、それぞれのメディアでミドルファネルを獲得する方法はあるが、実行できていないように見える。テレビと同じ素材をそのままデジタルで流す、では、メディアのポテンシャルを生かせていない。今後も更なるミドルファネルを獲得するかの研究が必要であり、併せて、第3のメディアを検討することで、購買ファネルを網羅したプランニングが必要である。
図3 購買ファネルとメディアの対応
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 シニアコンサルタント 森田 光一