2022年7月 6日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
"ググる"より"タグる"?SNS社会における口コミのパワーとは
Twitter、InstagramなどのSNSが普及した現代では、個人による情報発信がより気軽になった。SNS投稿を通じて情報を得ることも多く、"ググる"よりも"タグる"時代とも言われている。そのような中で、人々は意思決定においてどのような情報を参考にしているのだろうか。
生活者全体では、まだまだ「口コミ」よりも「公式サイト」の情報が参考にされている
まずは生活者がどのような情報を参考にしているのか、全体の動きを見てみよう。図1はカテゴリごとに「商品購入時にどのような情報を参考にするか」について尋ねたものである。これを見ると「公式サイト」がすべてにおいてトップに位置している。"タグる"時代と言われつつも、全体ではまだまだ公式サイトで情報収集をするのが主であるようだ。やはり公式が提示する情報の正確さに安心を感じているのかもしれない。
図1:商品購入時に参考にする情報(全体)
一方、カテゴリでは違いが見られた。飲料、菓子、化粧品は「公式サイト」と「SNSの口コミ」が近い水準にある一方、医薬品、家電用品では差が大きい。医薬品など単価が高く、専門性が高いものについては、正確な情報で機能をきちんと吟味したい、といった気持ちなどから消費者の「口コミ」は参考にされづらいのだろう。
SNSを使っているから「口コミ」を参考にするわけじゃない、性別・カテゴリとの相性が重要
では、SNSの利用が活発な20-30代ではどうだろうか。「公式サイト」と「SNSの口コミ」に絞って性年代別の結果を示したのが図2である。まず女性20-30代を見ると、飲料、菓子、化粧品における「口コミ」の割合が高いのが目立つ。この割合は過去から一貫して高まっており、口コミを参考にする行動が広まっているのは間違いない。一方で、男性20-30代は同様の傾向を示しておらず、同じSNSの利用が活発な層でも性差が存在している。さらに、女性20-30代に再び目を戻すと、医薬品、家電用品については「公式サイト」の割合が高く、前述したカテゴリの影響が見える。これらより「口コミ」を参考にする行動は、SNS利用率に加え、性別・カテゴリの影響を大きく受けると言える。
図2:商品購入時に参考にする情報(性年代別)
女性20-30代にとっての化粧品を考えてみると、購入にあたって公式サイトの情報ではイメージしきれない使用感などが意思決定に重要な要素である。また購入頻度も高いことから個人の情報発信数も多い。したがって「口コミでしか得られない要素を重視し、かつ情報を入手しやすい」際に口コミは強く参考にされると考えられる。こうした観点でみると、男性20-30代では、例えばゲームや映画などのカテゴリでは口コミを参考にする割合が高い可能性がある。
今後、時代とともに新たなSNSも生まれ、全体の利用率も高まる中で、SNSによる口コミの力はますます強まるだろう。マーケティング担当者は、自社の商品・サービス特性とメインターゲットを踏まえて口コミとの相性を考慮に入れる必要がある。そして、インフルエンサーやUGC、バズマーケティングといったユーザー発信のコミュニケーション施策も柔軟に取り入れていくことが求められるだろう。
出所)NRI インサイトシグナル調査(2022年4月、関東男女10-60代)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 淺桐 祐