2022年6月29日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「企業のサステナビリティ活動を、事業売上に繋げる"ひとつの方法"」
生活者が考える「サステナブル企業=マーケットシェア」という衝撃
今やどこの企業でも積極的に取り組んでいるサステナブル活動。その達成状況を計るため、いくつかのレイティング会社が独自の指標でランキングを発表している。但し、算出ロジックがそれぞれ異なるため、その順位にバラつきも大きい。今回は企業の活動が実際にどの程度、浸透、理解されているかを生活者サイドから調査した結果で分析する。
図1 サステナビリティ活動に積極的な企業と売上規模(自動車)
出典)左側:2021年9月NRIインサイトシグナル調査(n=1575)、右側:日本自動車販売協会連合会 2020年新車販売台数(軽自動車除く)
一般生活者がどのように感じているのかを測るため、単純に「あなたはどの企業がサステナビリティ活動に積極的だと思いますか」と質問する。すると、衝撃的な結果が得られた。右のグラフは国内の自動車カテゴリにおける「生活者がサステナビリティ活動に積極的」と思うアンケート結果である。左のグラフは、2020年新車販売台数のランキングである。驚くほどグラフの形状が一致するのである。同様にコンビニや銀行、不動産など別のカテゴリでも分析したが、「サステナビリティ活動に積極的」と「カテゴリシェア」はほぼ同じ結果となる。言い換えると、サステナビリティ活動をしようがしまいが、売上規模に依存してしまう、ということでもある。
サステナビリティ活動における「広告」の役割
図2 サステナビリティ活動に積極的な企業と売上規模(食品)
出典)左側:2021年9月NRIインサイトシグナル調査(n=1563)、右側:2020年有価証券報告書より集計
しかしながら、別の結果が得られたカテゴリがある。それは食品カテゴリである。先ほどと同様に売上と比較をする(図2)。ここでもサステナビリティへ積極的であると思われるランキング1位の味の素は売上でも1位であるが、それ以下に大きな違いが見られる。売上では8番目であるカゴメがサステナランクでは2位になり、同じく売上では6位のハウス食品もサステナでは3位となっている。先ほどと異なり、食品カテゴリでは売上に依存しない結果となっている。それはなぜか。原因を探求するため、2020~2021年の各社のテレビCMの出稿内容をひとつひとつ分析するとサステナランク上位3社だけ見られる共通の特徴が存在した。その3社とも、"企業広告"のGRPの割合が高いのである。カゴメはこの期間中に最も多く出稿したのが企業広告であり、ハウス食品はバーモントカレーについで企業広告を2番目に多く出稿している。ランクトップの味の素も4番目に企業広告を出稿している。一方、4位以下の企業では企業広告は上位には入らず、商品広告の割合が圧倒時に高いのである。もちろん、テレビCMにおいて、企業広告を多く出稿することだけが、サステナビリティの積極性に寄与するわけではないが、生活者のカテゴリ別の違いを分析すると、何かしらの影響があると考えざるを得ない。
サステナビリティ活動は、地球の将来のために重要な取り組みであることに疑う余地はない。その中で、この取り組みを少しでも事業活動にも繋げようと考えた場合、活動の出口戦略、つまり広告やPR活動も同時に検討しておく必要があるといえよう。
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 松本崇雄