2022年5月25日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

「紅茶かコーヒーか」ではなく「紅茶もコーヒーも」。改めて購買行動把握を

更なる市場拡大のために、どのジャンルへ進出するか

商品・サービスのシェアや売上拡大のために、ユーザー・顧客数を増やすことが効果的である。そのためにマーケターは、どの市場を攻めるのかを検討する。すでに開拓済みの既存市場に留まることもあれば、未開拓の新規市場に参入する方針を採用することもある。新規市場の参入には、当然ながら入念な検討が必要である。新規市場にはこれまで通りの方針でも通用するか、どんな層が居て、どんなニーズがあるのか。

図1 飲料カテゴリでのジャンル別市場シェアの比較marketing_v80_1.jpg

上記6カテゴリを100%とした時に各ジャンルの飲用率からシェアを算出
位置関係には特段の順序性はない

1は飲料カテゴリにおける主要なジャンルについての飲用率を示している。飲用率=市場規模と考えられるため、飲用率を把握することで、各ジャンルごとにどれだけの売上余地があるのかも把握できるし、どのジャンルの市場に参入すれば、どれだけ新たに顧客を獲得できるかも想定しやすい。

例えば缶コーヒーを主体として新規市場開拓を考えると、更なる拡大のためにお茶や紅茶市場なのか、炭酸飲料市場なのか、どこのジャンルのユーザーが獲得しやすいかを検討することになる。

思うに、缶コーヒーと炭酸飲料の嗜好が似ているとは考えづらく、お茶や紅茶市場への参入の方が想像しやすい。一方で、「紅茶派vsコーヒー派」と言われるように、ジャンルとして相容れないとも考えられる。

「紅茶か、コーヒーか」どころか、ジャンルの取りやすさに差はない

図2 ジャンル別購入率の重複(週1以上)marketing_v80_2.jpg

緑網掛けは合計より高い箇所

2では、ジャンル別の購入者について、他ジャンルの購入率を見ている。すると、どのジャンルについて見ても、全体の購入率より大きく上回っており、ジャンル間に取りやすさの差が明確、とは言いがたい(表の購入率を横に比較)。即ち、紅茶ジャンルから顧客がとれるか、といった「紅茶か、コーヒーか」ではなく、どのジャンルからも獲得可能といえる。

 このことから購買傾向としては、 「いずれかジャンルの飲料を一定頻度以上購入するか」が重要であり、缶コーヒー目線では、紅茶市場から顧客を獲得しようというより、「よく飲料を購入する層」についてどのように缶コーヒーの優先順位を上げるか。または「あまり飲料を購入しない層」に、例えばオンライン購買での箱買い促進にトライするなどの新規開拓を行うか、が市場戦略のオプションになる。このようにシングルソースで顧客の購買行動を改めて分析することで真に競合するジャンルや市場が把握でき、適切な戦略が検討できる。

出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 主任コンサルタント 森田 光一

NRIマーケティングサイエンスコンサルティング部では、シングルソースデータによる生活者の行動を毎日継続的に収集しております。お客様のテーマや課題にあわせて、データの追加調査や分析をおこない、マーケティング課題解決のお手伝いをいたしますので、こちらより、お気軽にお問合せください。