2022年4月20日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

アパレル業界でも、「リセールバリュー」を意識した新しいマーケティングを

ファッション好き若年層を中心に、リセールバリューを考慮した服の購買行動が見られる

 メルカリに代表されるフリマアプリなどの普及で、洋服の二次流通でのCtoC取引が一般的になってきている中、リセールバリュー(二次流通でどれくらいの値段で売れるのか)を考慮した消費行動をとる人が少なくない。
 図1は、洋服の購入時にリセールバリューを考慮しているかどうかの調査結果を示しており、2060代男女のうち「常にorときどき考慮している」人は約15%であった。リセールバリューを考慮する傾向は、特に若年層やファッション好き*層で強く出ており、ファッション好き20-30代女性では約26%、ファッション好き20-30代男性では約40%もの人が、「常にorときどき」リセールバリューを考慮して洋服を購入していると回答した。

図1:洋服購入時にリセールバリューを考慮する人の割合marketing_v78_1.jpg

*「ファッションが好きである」が「よくあてはまる」「あてはまる」と回答した人をファッション好きと定義

リセールバリューがあれば、気に入らなくても売れる。男性は価値判断の参考にしていることも

図2:洋服の購入時にリセールバリューを考慮する主な理由marketing_v78_2.jpg

母数は、洋服購入時、リセールバリューの考慮経験がある人

 では、ファッション好き若年層は、何故リセールバリューを考慮するのか。
 図2の調査結果を見ると、ファッション好き20-30代女性では、リセールバリューを考慮している理由として「試してみて気に入らなった場合、売却したいため」が約52%と高い。 実際、ファッション好き20-30代女性の約46%は、フリマアプリで新品・未使用品の洋服の売却経験があるという調査結果(同インサイトシグナル調査)も出ており、購入する前にリセールバリューをチェック→購入して試してみる→気に入らない場合フリマアプリで新品同然のまま売るという消費行動パターンが推測できる。また、同調査では、新品の売却経験がある人の約34%が、「実際のモノを見ずにネットで購入した商品が、想像と違い気に入らなかった」ため売却をしたと回答。現物の確認ができないネット通販では「想像と違う商品が届いた」ということも当然起こり得る。そのため、そういった問題を解決する手段の一つとして、ネットで服を購入後、家で試着をしてみて気に入らなければフリマアプリで売却する人も一定数いるようだ。
 一方、ファッション好き20-30代男性のリセールバリュー考慮理由を見ると、 「試してみて気に入らなった場合、売却したいため」 は約38%と出ており、女性ほど多くはないものの、購入後試してみて気に入らなければ売るという行動をとる人は男性でも一定数いると考えられる。そして、ファッション好き20-30代男性では「リセールバリューがある物の方が価値を感じるため」という回答も、同じく約38%と高く、女性の2.5倍以上の割合だ。彼らは、実際に売ることを想定しているだけでなく、二次流通でも高く取引されているという事実から、商品そのものに価値を見出す傾向があるようだ。例えば、メルカリなどで安く取引されているブランドより、中古でも高値で取引されるようなブランドの方が、価値があり魅力的なものに感じるなど、物の価値判断にリセールバリューを参考にしている人が少なくないと考えられる。

今後、二次流通における商品価値が、一次流通において重要な指標になる可能性も

 現状、リセールバリューを意識しているのは、ファッション好き若年層が中心だが、服の購入金額・頻度が高く、アパレル業界のイノベーター・アーリーアダプターになる可能性の高い彼らの存在は軽視できないだろう。リセールバリューが彼らのインサイトに及ぼす影響は男女で若干の違いが見られるが、いずれにせよ、一次流通における購買の意思決定に影響し得る要素の1つであることは認められ、リセールバリューの高さは購買の後押しになり得る。今後のアパレル業界のブランドマーケティングでは、リセールバリューを1つの指標として意識することも重要になっていくだろう。

出所)NRI インサイトシグナル調査(関東20-60代、20221月)

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 星美緒

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