2022年4月 6日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

「PayPayの手数料有料化。負担増の中小加盟店は継続利用すべきか?」

PayPay利用・登録者は生活者の約55%、うち約9割がクレジットカード併用。

 202110月、QRコード決済大手のPayPayMPM方式のシステム利用手数料を有料化した。中小店舗でよく導入されるこの方式はこれまで加盟店の手数料が無料であった。そこで今回、この有料化による加盟店の利用存続可能性を判断するため、決済サービスの利用状況や利用態度に関するアンケートを実施した。

 図1は、各決済サービスの登録・利用率とキャッシュレス利用者におけるメイン利用サービスを示している。これによると、PayPay単体の利用・登録率は約55%に達することがわかった。

図1:各決済サービスの登録・利用率とキャッシュレス利用者におけるメイン利用サービスmarketing_v76_1.jpg

 また、ここでPayPayユーザーに限って、他のキャッシュレスサービス利用率をみると、9割以上はクレジットカードを併用していることがわかった。つまり、PayPayユーザーの殆どが代替手段を持っているのだ。加えて図2では、PayPayユーザーにおける決済サービス複数利用の柔軟性について示しており、ここで、「日頃利用している決済サービス"だけ"を使いたい」と回答したのは、PayPayユーザーの約4%であり、PayPayに強く拘る人は非常に少ないという結果となった。

図2:PayPayユーザーにおける決済サービス複数利用の柔軟性marketing_v76_2.jpg

キャッシュレス利用者の約3~5割が、中小店舗の店選びにキャッシュレスを重視。

 図3では、中小店舗の店選びにおけるキャッシュレス決済重視者の割合を示している。業態によって傾向は異なり、チェーンの飲食店では約半数の49%がキャッシュレスを重視するという結果に。一方、個人経営の飲食店では31%程度となっており、業態によってキャッシュレス重視度には差があるため、決済サービスを網羅し、拡充させることの優先度は必ずしも高くない。

図3:キャッシュレス利用者における同決済重視者の割合marketing_v76_3.jpg

 解約検討中の加盟店は、全会計におけるキャッシュレスの利用率や、PayPay利用率、PayPayのキャンペーンによる売上貢献を再確認し、「自社にキャッシュレスは求められるか?」「キャッシュレスはPayPayでなければならないのか?」等、今一度考えてみていただきたい。

 昨今、図1で示した以上に多くの事業者が決済サービスを提供している。加盟店からすると、全てのサービスに手数料を支払うことは難しいため、今後は決済サービスの統廃合も想定される。どのサービスが生き残るか、見極めた上での導入可否判断が重要となりそうだ。

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 梅畑友理菜

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