2021年11月24日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
飲みたいけど飲めないときのノンアル、飲みたくないけど飲むべきときの微アル
ノンアルは飲酒頻度高め層に、微アルは飲酒頻度低め層に選ばれている。
今年3月、アサヒビールからアルコール度数0.5%の微アルコール飲料「BEERY ビアリー」が発売され話題を集めた。6月には「BEERY ビアリー香るクラフト」も登場し、長引く巣ごもり生活の中で売れ行きは好調なようである。アルコール度数1%未満とされる微アルコール飲料は、サワーやチューハイなどの低アルコール飲料とノンアルコール飲料の間のほんのわずかな市場を攻めたように見えるが、潜在的なニーズを発掘し一定の支持を獲得したと言われている。果たしてどの層になぜ選ばれているのだろうか。
図1:ノンアル・微アルユーザーの飲酒頻度
(ノンアル N=2,289、微アル N=1,461)
上記を明らかにするため、今回ノンアル、微アルの飲用経験有無とアルコール習慣等について調査を行った。ノンアル、微アルユーザーが普段どのくらい飲酒しているのかを見たのが図1である。週2-3日以上の高頻度飲酒層にはノンアルが、ほとんど/全く飲まない低頻度飲酒層には微アルがより飲まれている。お酒をほとんど飲まない層がアルコール市場に進出するきっかけに微アルがなっていることが分かる。
高頻度飲酒層は制約があって飲めないからノンアルを飲み、低頻度飲酒層は人付き合いのために微アルを飲んでいる。
なぜ高頻度飲酒層にノンアルが選ばれ、低頻度飲酒層に微アルが選ばれているのか見てみよう。表1では高頻度飲酒層がノンアルを飲む理由上位5つを示している。高頻度飲酒層はお酒自体を好きで飲みたいが、運転や健康等の何かしらの制約により飲めないためにノンアルを飲んでいることが分かる。
表1:高頻度飲酒層がノンアルを飲む理由(N=987)
表2:低頻度飲酒層が微アルを飲む理由(N=547)
表2では低頻度飲酒層が微アルを飲む理由上位5つを示している。お酒をほとんど飲まない人は、体質的にお酒に弱く人付き合いのために微アルを飲んでいることが分かる。お酒の席でノンアルではやや申し訳ないと感じる層に微アルという選択肢が選ばれているのではないだろうか。低頻度飲酒層がノンアルを飲む理由と比較したところ、気分転換やリフレッシュ意向が微アルでのみ上位に挙がっており、アルコールが若干でも含まれていることに意味があるようだ。
微アルよりやや度数が高い低アルコール飲料についても調査を行ったが、微アルと同様の傾向が見られた。体質的に弱い層には低いアルコール度数が好まれる。低アルよりは度数が低いため飲みやすく、一方でアルコールがわずかでも入っているためノンアルと比べお酒感がありリフレッシュできる。そんな理由で微アルは、体質的に飲めないが人付き合いでノンアルや低アルを飲んでいた層に受け入れられているのではないだろうか。今後コロナウイルス感染症が収束するにつれお酒の席が増えていけば、彼らにニーズがある微アルはますます拡大していく可能性を秘めている。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ
(2021年7~9月、関東在住男女20~69歳、N=3,340、性年代構成比に基づきウェイトバック補正)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 コンサルタント 時丸耕太