2021年11月10日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
スーパー滞在時間減少にはサブ通路商品の計画購買強化を
新型コロナウイルスの感染拡大によって、暮らしが激変した。スーパーでの買物についても、「買物の頻度を少なく」や「店内での滞在時間をできるだけ短く」といった、感染予防のための要請が行政から発出された。マーケティングの観点からみると、店内の滞在時間減少は商品への視認・接触機会が減ってしまうことが危惧される。今回は、スーパーの中心顧客である女性に対して、買物行動の実態と商品の接触機会についてスポットライトを当てる。
スーパーの女性顧客のうち、約15%は店舗内の受動的な商品認知機会が減少
図1は、コロナ前(2020年1月以前とする)とコロナ後(2020年2月以降とする)の、スーパーでの買物行動の変化を示している。購入点数・金額が増えたと回答した生活者は3割、滞在時間・来店頻度が減少したと回答した生活者も3割である。まとめて購入し、その分来店頻度を減らしている。
図1:コロナ禍前後でのスーパーの買物行動の変化
滞在時間を減らした生活者に追加調査をすると、「コロナ前まで購入計画をしていなかった売場を訪れていたが、コロナ後で計画購買した売場しか訪れなくなった。」と回答したのが、半数を占めている。このことから店舗内の受動的な商品認知機会が減少していることがわかる。
特にサブ通路に置かれがちな定番商品である、酒類やチョコレートの商品認知機会が減少
マーケティング戦略において、特に商品認知がKPIとして重視されるのは、新商品である。テレビCMなど広告媒体を用いて認知度を高めることも重要だが、店舗で商品を見つけてもらうことも重要である。
図2は、滞在時間の減少した生活者がコロナ後において、店頭での新商品の認知機会がどのように変化したのかを示したものである。今回聴取した食品カテゴリーでは、新商品を視認する機会が減ったと回答したのは、平均で約25%である。
図2:滞在時間減少者における新商品の認知機会
特に目立つのは、チョコレートや缶チューハイ、ビールなどの酒類である。これらの商品群は、スーパーにおいて主通路ではなく、サブ通路に置かれやすい定番商品である。加えて、嗜好性が高い商品であることから、特にライト層への認知が減少したのではないか。
クーポンによる行動経路への組み込みや、マスメディアやSNSによる商品認知向上が重要に
コロナウイルスの感染拡大によって、スーパーでの買物行動を最小限に抑えるようになった結果、来店頻度の減少や、店内での行動経路の縮小による滞在時間減少によって、店頭における新商品の接触機会が減っている。
商品認知機会を補う手段として、小売企業が展開するアプリで、新商品もしくは同じカテゴリーに展開する主力商品の告知やクーポンを配布することで、売場へ誘導し、接触してもらうことも重要である。一方で、アプリの普及率を考慮すると 、マスメディアやSNSを用いた商品認知戦略もより一層重要になるだろう。
出所)NRI インサイトシグナル調査(2021年8月21日、関東女性20-60代、N=1,640)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 コンサルタント 寺内 秀斗