2021年11月 3日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
ネット購買:23区全体に広がる食料品、沿線沿いに広がる衣料品
地域住民特性で異なるネット購買行動中野はネット食料品購入率が周辺より低い
図1は、食料品のネット経由の購買率の地域別(町丁目単位)推計値を可視化したものである。
図1:ネットで食料品を購入する比率
赤い地域がネット利用率が高い上位10%の地域であるが、赤い地域は東京23区の西側エリアに面的に広がっていることがわかる。但し、中央線沿線の中野駅あたり(白丸)は黄色エリアとなっており、周辺に比べ実店舗での購入比率が高いエリアとなっている。
図2:世帯平均預貯金
ネットによる食料品購入比率が高い地域は、世帯平均所得・金融資産が高く、共同住宅比率も高いなどの特徴がある。中野駅周辺は、共同住宅比率は高いものの、世帯平均の所得・金融資産が相対的に低く(図2)、価格訴求力のある実店舗の利用が多くなっていると推定される。
図3:ネットで衣料品を購入する比率
食料品と異なる様相を呈しているのが衣料品のマップ(図3)である。衣料品のネット購買率が高い地域は、主要鉄道沿線に沿って郊外地域まで伸びている。
衣料品のネット購買率が高い地域は、情報通信や金融等の所得の高い職業についている人が多く、また居住年数が浅い若い人が多い。更に、カードローンを利用する消費性向の高い人も多いといった特徴が検出されている 。
衣料品のネット購買率が高い地域は、駅ビル商業施設をはじめ衣料品を実店舗で購入する機会に恵まれた地域であるにもかかわらずネット購入率が高い。ポストコロナにおいてこうした傾向が加速するようであれば、若い人をターゲットとした店舗戦略のありかたは再検討される必要があるのではないか。
データの推計方法
ネット購入頻度のデータは、今年の5月に全国を対象に実施した5万サンプルのアンケート調査と、NRIが整備しているエリア情報(町丁目単位の所得や金融資産など)とを組み合わせた統計モデルにより推計した値である。
(出所)NRI(地図)(株)マップル
(注)色分けは町丁目単位で実施(一都三県を対象)
赤:上位10% 黄:上位10~20% 緑:上位20~40% 薄青:上位40~70% 青:上位70~100%
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 上級データサイエンティスト 武井博一