2021年10月27日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「食×SDGs」、認知・関心を高めるには?
今日、様々な分野において「サステナビリティ」や「SDGs」がキーワードとなっている。今回はその中でも、生活者にとって最も身近な分野の一つである「食」にフォーカスを当てたい。
「食×SDGs」は項目によって認知・関心に差関心が高いのは「食品ロス」「地産地消」など
図1は「食×SDGs」に関連したキーワードの認知・関心状況を示している。最も関心が高いのは「食品ロス」で、半数以上が食事を選ぶ際に多少なりとも重視すると回答しており、次いで「地産地消」「脱プラスチック」と続く。
図1:「食×SDGs」の認知・関心状況
一方、「持続可能な農業」「アニマルウェルフェア」など生活者が想像しづらい項目は、認知率が低く、まだまだ浸透していないのが現状だ。また、「トクホ」や「グルテンフリー」など健康関連の項目では、認知はあれど「関心がない」割合が比較的高く、自分には関係がない、とする生活者も多い。
全体的な傾向としては、「男性よりも女性」「若年層よりも中高年層」で認知・関心が高い傾向にあり、メディアの接触量やスーパーの利用頻度などがその理由として考えられる。
関心を持つきっかけはテレビ番組が最多、若年層に対しては学校教育やSNSなどの拡充を
「食×SDGs」に関心を持つようになったきっかけを尋ねてみると、全年代を通して「テレビ番組」が最多で、「インターネット上の記事」も上位にきている。やはり最も多いのはメディアでの取り上げによって興味を持つという経路だ。
図2:「食×SDGs」に関心を持つようになったきっかけ
年代ごとの違いを見てみると、特徴的なのは10~20代である。まず「学校での教育」が非常に高く、「インターネット上の記事」を上回って2番目にきている。若年層の認知獲得のためには、やはり学校教育の拡充が重要であることがわかる。また、10~20代では「SNS、ブログ、動画共有サイト等」の回答率も高い。これらは30~40代でも5位にランクインしており、今後ますます重要なチャネルになるだろう。
しかし、SNS等の扱いには気を付ける必要がある。というのも、学校教育の場合、伝えられる情報は好意的なものに限られるが、SNS等では批判的な情報や誤った情報も発信されてしまう恐れがある。投稿者が安易な「バズり」を狙ったために"炎上"することも容易に起こりうる。こうしたリスクを抑えるため、投稿内容を随時監視し続けるとともに、批判的な発信が増加してしまった場合の対処方法についても、あらかじめ検討しておく必要があるだろう。
社会課題の認知・関心の拡大はかねてからの課題である。メディア・教育だけでなく個人間の共有・拡散も重要なチャネルとなりつつある現代社会においては、様々なリスクに気を付けながら適切な情報発信を行いたい。
出所)NRI インサイトシグナル調査(2021年8月、関東男女10-60代)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 コンサルタント 淺桐 祐