2021年7月14日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
浸透するSDGs、サステナブルチョイスは日用品から一軒家まで
サステナビリティ活動に対する生活者の興味はここ数年で急増
2020年10月、菅総理が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」を宣言したことは記憶に新しい。これまでの環境対策では省エネやエコといった消費側に対する取組がメインであった一方、今後は製品設計・製造から消費まで全てのサプライチェーン、業種に対して脱炭素の取組を強化していく必要がある。
図1:「SDGsに関する浸透度」割合推移
そこで、本レポートでは『企業のサステナビリティ活動の認知度と、その認知が生活者の購入にどの程度影響するのか』を調査した。図1はSDGsに関して生活者の認知、関心についての変化を示している。2019年と比較して、現在は認知なし層は大幅に減少し、内容認知・関心層は約4.5倍増加している。SDGsは生活者に対して一般的に普及したと言っても過言ではない。
SDGs関心層は耐久、非耐久消費財のどちらにおいてもサステナブルを選択
図2ではSDGsに対して、内容認知・関心層と内容認知層の消費動向の比較を行った。どの業種でもSDGs関心層は環境配慮している製品を選ぶ傾向にあるが、これを耐久消費財と非耐久消費財に分けて分析する。
図2:購入の際に環境配慮設計を考慮する製品
耐久消費財は、製品によっては補助金が支給されることや、電気代等の支出抑制につながるため、生活者はコストメリットを享受しやすい。そのためそれぞれのセグメントで環境配慮製品を考慮する割合が高い。一方で非耐久消費財についても平均差分が4.4ptであり耐久消費財と同水準となっている。生活者に対し、直接経済的なメリットが見えにくい非耐久消費財でも購入に対して影響が現れている。その要因としては、再生プラスチック容器の選択や「体に優しそう」など環境配慮による副次的なメリットが感じやすいことなどが挙げられる。耐久消費財、非耐久消費財のどちらにもサステナブルな選択様式、すなわち『サステナブルチョイス』が萌芽し始めている可能性が考えられる。製品購入の意思決定要素としてはまだまだ「価格」や「品質」などがメインであるが、SDGs関心層が増加してくると「環境に配慮していること」という企業の取り組み・姿勢が購入を後押しする重要な視点となり得るかもしれない。
生活者のサステナブルチョイスの増加は今後のマーケティング戦略にも大きく影響を与えると考えられ、環境配慮設計による生活者へのメリットを押し出す訴求、生活者を関心層に引き寄せるブランディングなどサステナブル活動を効果的にマーケティングへ活用していきたい。企業のサステナブル活動はCSR観点だけではなく、経済性への展開も含む"武器"として取り組む必要があるだろう。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 川上貴大