2021年6月 2日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
テレワークで進む引越し、家賃より働きやすさ・住みやすさがポイント
直近1年間はテレワーク実施者が引越し市場をけん引
これまでのレポートでも述べたとおり、コロナの感染拡大により消費者の生活スタイルは大きく変化してきた。今回は住まいに関しての変化を見てみよう。2021年5月に、直近1年以内の引越し経験と今後の引越し意向を調査した
図1 引越し実態・意向
※テレワークあり/なしは、ここ1ヶ月以内のテレワーク有無で定義
結果が図1である。フルタイムで働く人の中でも、テレワークをする人は引越しに積極的な傾向が見られることが分かる。生活スタイルが大きく変わる中で、住まいの見直しも進めているようだ。これらの人は何を基準に家探しをしているのだろうか。
テレワーク実施者は、家賃よりも家の広さ・部屋数・日当たりなどの重視度が上昇
図2左のグラフを見ると、テレワーク実施者は、非実施者に比べ、「広さ」「日当たり」「部屋の多さ」といった重視度がコロナ前後で高まっている。家でも解放感を持って仕事をできるようにしたり、個室を設けて集中できるようにしたいといった背景がうかがえる。逆に、テレワーク実施者で非実施者に比べて重視度が増えていない項目としては「通勤時間」「家賃の安さ」があげられ、これらは、テレワーク実施者の中でも「広さ」「日当たり」「部屋の多さ」より重視度は増えていない。必ずしも都心から遠い場所で安く住もうというわけではなく、きちんとお金をかけてでも、住みやすく働きやすい家を選ぶ傾向が強いようだ。
図2 家選びにおいてコロナ前後で重視度が増えたこと
※1年以内引越しあり もしくは 引越し意向ありの人に対して調査
男性は自炊、女性は巣ごもりでも気持ちよく過ごせる環境を意識
続いて、男女別で傾向が異なるかを分析する。
家の面積や部屋数といった項目は、テレワークの有無別で、男女ともに差が大きい。これはそれぞれ別の部屋で仕事をするという新しい生活スタイルの現れであろう。一方、男女別の違いのあった項目ををみると、男性は「キッチン」「近隣の商業施設」、女性は「日当たり」「築年数」などの重視度が高まっている。男性はコロナで自炊が増えたこと、女性は外出率の低さが原因として考えられる。
以上のように、生活者の家選びの基準は変化しており、セグメントによっても傾向が異なる。不動産・
住宅業界は、これらの変化を正確にとらえ、ニーズに合ったサービスを展開してゆくことが求められる。
出所)NRI インサイトシグナル調査(2021年5月22日、関東男女20-60代)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 中田壮星