2021年4月21日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
コロナ禍で高まる投資熱、若年層の金融意識は二極化
コロナ・ショックを経て存在感を増す若年投資家
世界的に株価が大暴落したコロナ・ショックから1年が経過した。その後の株価の乱高下は投資家の懐事情に大きく影響を与えたが、一方で空前の投資ブームも呼び起こした。ブームによって、個人投資家の顔ぶれにも変化が見られるようだ。
図1 資産運用を行っている人の割合
図1は、資産運用を行っている人の割合の推移を年代別に示している。コロナ以前から、つみたてNISAやiDeCoなどの制度の広まりとともに緩やかな増加傾向にあったことが分かるが、コロナ・ショック後も増加の傾向は止まらない。特に20代ではコロナ・ショックのあった20年3月は29%だったのが、21年2月には35%で6pt増(全年代平均1pt増)と上がり幅が大きく、金融市場における若年層の存在感が増している。
図2 コロナ禍における投資額の増減
(2020年4~5月と2021年1月の比較)
投資家の「人数」だけではない。図2は、コロナ禍における投資額の増減を年代別に表している。1度目の緊急事態宣言が発令された2020年4~5月頃と比較して、2021年1月時点での投資額が「増えた」人が50~60代では15%前後であるのに対して、40代では2割、30代3割、20代では4割。若年層ほど投資額が「増えた」割合が高く、投資に対してより積極的な姿勢を取っている様子が伺える。金額の面でも、若年投資家の存在はこれまで以上に際立ってくると考えられる。
投資しない若者は老後資金の不安がない?
コロナ禍における投資ブームの背景には、見通しの立たない将来への「不安感」があると言われている。ここでは、年金や2000万円問題など語られることの多い老後資金を切り口に不安と投資の関係を見ていく。
図3 老後の資金計画が不安な人の割合
図3は資産運用の有無別に老後資金への不安がある人の割合を示した。全年代を通して資産運用を行っている人の方が不安を感じているが、特徴的なのが20代や30代。資産運用の有無による差が大きく、資産運用なしの若者はあまり不安を感じていない。ただし、彼らは老後資金に対する不安要素が少ない、と考えるのは早計だ。資産運用を行っていない人は行っている人よりも収入が少ないなど、経済的な余裕に乏しい傾向にあるからだ。老後資金の計画を立てたことがないから不安を感じるに至っていない、というのが実態に近いだろう。若年層の中で、金融意識の高い層が資産運用に挑戦する一方で、高くない層は老後の資金について検討することもない、という二極化が生じていると言える。
若年層の投資熱を一過性のブームに終わらせないためには、後者の取り込みが鍵になる。金融への感度の高くない若者にも、老後の資金計画がないことに対する危機意識を喚起していくことが必要だ。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソーパネルスデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 皆川聡美