2021年2月25日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
コロナ禍で高まる転職意向、「若年男性層」「ハイクラス層」が牽引
転職意向は緊急事態宣言で一時落ち込みを見せるも増加傾向
コロナ禍で経済が停滞する中、生活者の転職意向はどのように変化しているのか。図1では、関東のフルタイム勤労者における、2019年から2021年にかけての転職意向の推移を示している。まず目につくのは緊急事態宣言下の2020年5月と2021年1月の動きである。やはり経済が止まることへの不安を覚えてか、どちらも落ち込んでいる。
図1 フルタイム勤労者における転職意向
しかし、全体的な動きをみると、2019年7月から2020年7月にかけて意向の水準は上昇しており、2021年1月でも2019年7月並みと、転職への意識自体は増加傾向にある。その裏側には、DX推進等でニーズが高まるIT・Web業界を目指す動きや、あるいはリモートワークや副業等のより柔軟な働き方を求めての動きもあろう。身近に経済の停滞を感じると委縮する部分もあるが、新しい生活に対応すべく着実に動いている。
2020年7月は経済が動き始めたことで意向が大きく高まったと考えると、関東における転職意向は、2度目の緊急事態宣言が解除される3月から4月にかけて、昨夏以上のさらなる高まりが予測される。
コロナ禍で活発に動く「若年男性」「ハイクラス」
活発になる転職市場を引っ張るのは誰か。図2a・bは直近4地点における転職意向の変化を性年代別・年収別に示したものである。まず性年代別の結果をみると、2021年1月時点で目立って水準の高い男性20-30代が目に留まる。この層は2020年7月と比べても水準が上昇しており、この先さらなる伸びが見込まれる。一方で女性は緊急事態宣言下での落ち込みが非常に激しく、社会情勢に敏感な傾向にあるといえる。コロナに対する不安が沈静化するまでは、女性の転職意向はまだまだ不透明な状態が続くだろう。
図2a 転職意向の変化(性年代別)
図2b 転職意向の変化(年収別)
続いて年収別に目を向けると、意向の水準自体は300万円~600万円未満の層で最も高いものの、直近で上昇がみられる1,000万円以上の層もほぼ同水準である。高いスキルを持つ層は、コロナ禍の困難な環境下だからこそ、一層活躍できる場を探して積極的に活動している。経済回復のメドが立たないなか、こうしたハイクラス人材の転職意向は徐々に伸びていくとみられる。
コロナ第3波が落ち着く春先、転職市場では「若年男性層」と「ハイクラス層」が、大きな動きを見せるだろう。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
(関東男女20-60代)
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 淺桐祐