2020年12月 3日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
財布の紐が締まるいま、マーケティングチャンスは"プチ富裕層"にあり
年収1,000万円以上のプチ富裕層はコロナ期でも使える金額が多い
景況感の低迷とともに外出自粛も拍車をかけ、個人消費の落ち込みが続いている。そんな中でも商品を買ってもらうためにはどうするべきか。緊縮期におけるマーケティングのあり方を考察する。
図1 ひと月あたりに自由に使える金額
(2020年8月・世帯年収別 )
図1は、コロナ期における個人が自由に使える金額を世帯年収別に見たものである。年収1,000~2,000万円世帯で6.1万円、2,000万円以上世帯だと12.6万円と、1,000万円を境に大きく高まっていることが分かる。世帯年収1,000万円以上の"プチ富裕層"は、消費価値観として価格感度が低い傾向もあるため、欲しいものには十分にお金をかける余裕があり、1,000万円を境に、急激に高まる。
図2 オンラインチャネルの利用率:月1回以上
(プチ富裕層と全体の比較)
一方で、就労率が高くテレワーク率が高いこともプチ富裕層の特徴だ。図2を見ると、プチ富裕層では「楽天」や「Amazon」などのネットショッピング利用率が高いことがわかる。この傾向は、コロナ期に入りさらに上昇している。リアル店舗よりもネットショッピングでの購入を想定すべきことが分かり、デジタル施策での購買促進が推奨される。
プチ富裕層には、価格やタレントではなく自分にとって"いかに役に立つか"が重要
プチ富裕層が「買いたい」「利用したい」と思うポイントは何か。図3では、コロナ期に出稿された実事例からプチ富裕層に刺さるメッセージを見ている。すると、いずれの事例も、"具体的にどのような機能や便益があり"、"自分にとってどれだけ有益か"によって、購入意向が刺激されていることが見て取れる。逆に、出演タレントやなどにはあまり反応していない。このことは、プチ富裕層の価格感度が高くない一方で、購入する際はクオリティや品質にこだわる、という消費傾向からも裏付けられる。
図3 プチ富裕層の購入・利用意向を高めた訴求内容・メッセージ
自分にとって有益と感じさせる訴求内容やメッセージを開発するには、生活者の深い理解が必要となる。日々状況が大きく変わるいまだからこそ、自社ターゲット×プチ富裕層が何を考え、どのように行動しているかをデータから把握し、施策に反映することが重要である。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 森田光一 主任コンサルタント