2020年11月19日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
コロナ禍をきっかけに、自動車はSUV需要が高まる
コロナ禍により「移動」の価値観が変化。自粛生活の反動で、自動車ニーズも高まる。
5月の緊急事態宣言解除後、7月にはGoToトラベルキャンペーン(東京都は10月以降に解禁)、10月にはGoToイートキャンペーンが始まり、人々の移動や消費行動は活発化してきた。それでも、外出時はマスク着用の徹底、3密(密閉空間・密集場所・密接場面)を避けることを十分意識した行動がなされ、電車通勤においても早朝から出社する人まで増え、自然とオフピーク通勤が実現されている。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、人々の「移動」に対する価値観・考え方に新たな兆しが生まれてきた。
特に自動車保有についてはこれまでのトレンドから変わってきている。コロナ禍前はシェアリングエコノミーやMaaS等の移動トレンドにより、都市部中心に自動車保有・購入需要は下がっていた。しかし、緊急事態宣言期間中はゴールデンウィークにおいても余暇活動・消費行動を自粛せざるを得なかった状況の反動から、宣言解除後はレジャーニーズが高まり、それと関連して自動車保有ニーズも高まっている。また、自動車保有のメリットとして「生活に必要な移動を安全に行うことが出来る(60.7%)」、「家族だけで移動でき、感染リスクを下げることができる(53.0%)」が上位2項目となっており、自動車は感染リスク防止等の観点で安心な移動手段としても認識されている。
コロナの感染拡大防止で、アウトドアやレジャーニーズが高まり、「SUV」需要が高まる
これまでの自動車購入は、関東エリアにおいては運転のしやすさや単身世帯・二人世帯の増加から軽自動車やコンパクトカーの購入希望者が多いのがトレンドであったが、コロナ後の購入を予定している人については、SUVの購入意向が高くなる。新型コロナの感染拡大防止のため、3密を避けながら自然を満喫できるアウトドア熱が高まっているのだが、そのような消費者動向も追い風になり、SUV需要が高まっている。
図表 自動車購入希望の車型(関東エリア)
SUV購入を検討している人は自動車保有のメリットとして「クルマはアウトドア・レジャーを楽しむことができる(56.9%)」、「クルマは運転することで気分をリフレッシュできる(47.5%)」が上位項目に来ており、他の車型購入検討者より高い。アフターコロナの自動車訴求は、衝突防止等の安全価値訴求だけでなく、感染防止の安心価値や、レジャーを楽しむ・リフレッシュするための情緒的価値の訴求も合わせて行うことが有効だろう。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 林裕之 主任コンサルタント