2020年11月 4日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

コロナ禍でふさぎがちな今こそ「楽しさ」「ストーリー」重視のCMを

増える「ブランド指名買い」に対応してクリエイティブはブランド連呼すべきか

 コロナ影響により、買い物頻度が低下し、まとめ買いが増え、効率よく買い物をしなければならない意識が高まった。その結果、店頭に長時間滞在するのを避けたいことから、おもに主婦層で「いつもの商品」を指名買いする傾向が増えた(マーケティングレポートVol.21参照)。また、インターネットショッピングの増加からブランド指名買い傾向が増加している。このような状況に対応して、テレビCMのクリエイティブのあり方としては「ブランド指名」を取るために、商品名の記銘度をより高めるべく、「商品名」や「商品機能・特徴」を前面に押し出すべきなのだろうか。消費者の傾向を見ると、どうもそうではなさそうである。

コロナ期ではそれ以前に比べ、CMの「ストーリー」や「楽しさ」が意向創出に効くように

 図表1は、コロナ前とコロナ期で、CM各要素の印象の強さや評価が平均以上と以下で、どの程度購入意向の創出効果に差があったのかを見たものである。

図表1 CM要素別の購入意向の創出効果
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 要は、数字が大きくなればなるほど、その要素を印象に残すこと、その評価を受けることが意向創出に重要だということになる。

 これを見ると、印象に残った要素としては、コロナ期では「ストーリー」が最大、「音楽・BGM」や「出演者」も大きく伸びた一方で、「商品の画像・パッケージ」は減少。他の要素が伸びる「商品の名前」が横ばいとなった点も注目したい。

 評価については、とにかく「楽しさ」が大きくアップ。「イメージ合致度」も合わせて情緒的重要度が高まる一方で、「分かりやすさ」「情報の信頼性」などの機能的訴求の重要度の上がり幅は相対的に抑えられている。

不安で気分がふさぐ今だからこそ、CMにはポジティブな情緒的メッセージを求める

 外出自粛はやや緩和されたとは言うものの、いまだ外食・買い物・エンターテインメントについては自粛気味、景気の動向を含めた先行きについては強い不安が残る。米国での死者数更新、南アジアでの感染者数増加、欧州での第二波など暗いものばかりだ。そんな中、「覚えてもらおう」「買ってもらおう」というような、ある意味世知辛いCMよりも、明るさ、楽しさ、安心感や、ストーリー性、ブランドのイメージ世界観など、エンターテインメント性を持ち、CM自体が楽しめるようなものの方が、ブランドに対する購入意向を高めるということになる。

 以前、クリエイティブ失敗事例として、「ただの映像作品でしょ病」を紹介したことがある。世界観重視のイメージ型のCMでは商品への効果につなげるのに留意が必要、という内容だったが、消費者の心理は複雑だ。コロナ禍によ外部環境が劇的に変化した現在、効果的なクリエイティブのあり方についてもしっかりと見直していく必要があろう。

出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 松下東子 上級コンサルタント

NRIマーケティングサイエンスコンサルティング部では、シングルソースデータによる生活者の行動を毎日継続的に収集しております。お客様のテーマや課題にあわせて、データの追加調査や分析をおこない、マーケティング課題解決のお手伝いをいたしますので、こちらより、お気軽にお問合せください。