2020年10月15日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
失敗したくないからいつものを。主婦層で"いつもの買い層"増加
安さ重視や情報探索消費はひと段落。いつもの買いが上昇し続けている
Vol.20のレポートでは、インターネットショッピングの増加からブランド指名買い傾向が増加しており、ブランドロイヤルティを高めることの重要性をご案内した。一方、インターネットショッピングの割合は購買行動全体から見ると、まだ大きい割合を占めているとはいえず、コロナ期による外出率低下の今でも、スーパーやコンビニなどが購買チャネルの主役だ。
本レポートでは、リアルチャネルも含めた購買傾向がどのように変化しているかを分析する。
図表1 消費価値観の変化
図表1は、消費価値観の変化について過去2年の推移を見たものだ。緊急事態宣言前後の2020年3~5月で大きく高まった「安さ重視(=安さを重視する)」「情報探索消費(情報を調べてから買う)」の消費価値観が、緊急事態宣言明け以降大きく減少しており、一時的な変化だった。また「ユーザー評価を気にする」「周りの人のおすすめを参考にする」傾向も減少しており、口コミやインフルエンサーの影響力がやや落ち着いているかもしれない。一方で、上昇を続けているのが「決めているブランドを買う」だ。コロナ期に入る前後から一貫して上昇を続けており、一時的だった他の項目と異なり、「いつもの買い」層は現在定着しつつある傾向だといえる。
女性40代以上主婦で"いつもの買い"増加
図表2は2019年7月をコロナ前、2020年7月をコロナ後とし、ブランド指名買い層の構成変化を見ている。すると、特に、「女性40代以上」と「主婦層」で増加しており、「スーパー利用者」でも増加していた。以前にレポートした通り、主婦層はコロナに不安を感じやすい層のうちの一つである。そのため、スーパーに行っても長時間の滞在は避けたい傾向があると言える。これまでは、習慣的にスーパーに通っていたところから、できるだけ短時間で目的のものを購入するようになり、結果として「いつもの」を多く買うように変化したことが言えそうだ。
図表2 いつもの買い率の変化
失敗したくない心理を逆手にとる
上記のシーンを想定すると、「短時間で買い物を済ませつつ失敗はしたくない」という消費者心理が伺える。そのため、今後の主婦層へのマーケティングは「失敗したくない層」への継続購入をどのように促していくかが重要だ。
そのため「定番商品」への注力になる。定番化することで、継続的な購入につなげることができるだろう。また、単純に定番化するだけではなく、同じ定番品の傘下で新商品を導入したり、食品であれば、定番品を利用した様々なレパートリーのレシピを提示するなど飽きさせない工夫も重要になる。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 森田光一 主任コンサルタント