2020年9月 9日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「テレビはニュースの視聴が浸透、雑誌は趣味・教養誌が急回復」
野村総合研究所では、一年中、生活者のメディア接触のデータを収集している。今回は、これらのデータをもとに、テレビ番組と、雑誌の「ジャンル別」の接触状況の推移を比較してみよう。コロナ流行の前(1~2月)、第1波がきて緊急事態宣言が出された時(3~4月)、一旦落ち着いて第2波が来た時(6~7月)の状況を比較する。さらに1年前の状況とも比較することで、今後のジャンル別の生活者の接触可能性を予測する。
テレビはニュース番組の視聴が浸透、スポーツジャンルの復活が待たれる
コロナの第1波のタイミングで、テレビの視聴時間は大幅に拡大した。中でもニュースやワイドショーの視聴の拡大が顕著だった。第2波のタイミングになると、これらのジャンルの視聴が落ち着き、テレビ視聴時間全体も元に戻る傾向にあった。一方で、スポーツ番組は、コロナ感染拡大後は視聴割合が減少したままだ。スポーツ自体の延期や中止の影響により、放送時間数が減少している影響が大きいだろう。
図表1 テレビの番組ジャンル別の視聴
(1日30分以上の視聴割合)
言い換えると、スポートコンテンツが減少している中でも、テレビの総視聴時間はある程度の長さを維持している。ニュースなどの視聴習慣が浸透する中で、今後、スポーツの放送時間が増加すれば、テレビの視聴時間は、もう一度、増加することも考えられるだろう。
雑誌の閲読は、緊急事態宣言時に減少した趣味・教養誌やビジネス誌が復活傾向
定期的に購読している雑誌の冊数は、コロナ感染拡大後は微減傾向にあった。雑誌ジャンル別でみると、マンガは、コロナの影響を受けずに高位安定傾向にあるが、趣味・教養誌やビジネス誌などは、第1波のタイミングで閲読が大きく減少した。直近では元に戻る傾向にあり、雑誌の閲読数は回復傾向にある。
図表2 雑誌のジャンル別の閲読率
(定期購読雑誌のある割合)
一方、総合週刊誌や生活情報誌は、コロナ後は減少傾向が続いている。総合週刊誌は、通勤時の電車内などで暇つぶしに読む人も多く、テレワークの影響を受け、今後も苦戦が続くかもしれない。生活情報誌は旅行や食などをテーマにしたものが多く、外出自粛の動向が今後のカギになりそうだ。
テレビ、雑誌ともに、ジャンルごとに接触の増減傾向は異なっている。拡大するジャンルを見つけ、生活者との有効な接点として活用することが重要になる。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 部長 塩崎潤一