2020年8月27日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「デジタル施策は、その商品に興味のある"能動的接触者"を狙え」
デジタル広告は「わずらわしく」「基本スキップ」するため、受け身では見てもらえない
新型コロナの影響により、売上が大きく減少している企業も多く、プロモーション予算は削減の対象になる傾向が強まっている。限られた予算をやりくりしながら効率的な施策展開が求められている。本レポートでは、デジタル施策の効率的なプランニングについて言及する。限られた予算を無駄打ちとしないために。
図表1 メディア別の広告に対する印象
図表1は、テレビCMと動画広告についての印象を比較したものだ。特徴は一目瞭然で、動画広告について「邪魔・わずらわしい」のスコアが突出している。また、追加調査により動画広告をスキップする割合は85.1%に達することが分かっている。動画サイトの場合、テレビのように、広告枠がある前提でコンテンツが構成になっておらず、広告が出たり出なかったりするため「不意打ち感」が強いのかもしれない。邪魔に思うことで、広告をスキップされたり、動画広告以外のレコメンド動画やコメントを見られてしまう。
動画広告の場合、興味を引いて、スキップせずに見てもらうことが重要だ。TwitterやInstagramなどのインストリーム広告でも、投稿の一覧の中に埋め込まれるため、スクロールする手を止めてもらう必要がある。
その商品に興味が低い人は、そもそも動画広告を見てくれない?
図表2では、同一クリエイティブのテレビCMと動画広告について、プロモーション「前」の購入意向を比較している。出稿後に動画広告を認知する人はもともと、その商品についての購入意向が高いことがわかる。ターゲティング出稿の影響を排除するため、両メディアで、性・年代や、商品カテゴリの利用頻度は統一して集計している。
図表2 プロモーションの「事前」の購入意向率
この傾向はほとんどの事例において見られるもので、必ずと言っていいほど動画広告の認知者の方が事前の購入意向が高くなる。つまり、その商品を買いたいと思っている人が、あえてスキップせずに手を止め、動画広告を見てくれていると言える。
見てほしい人ではなく、見てもらえる人を狙う
デジタル施策は、あえて手を止めて見てもらわないと意味がない。広告を見てほしい人を狙う「企業目線」のターゲティングだとスキップされてしまう可能性が高く、広告を見てもらえる人を狙う「生活者目線」のターゲティングが必要になる。動画広告を認知してくれる人は誰なのか、データとともに明らかにするアプローチを推奨する。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 森田光一 主任コンサルタント