2020年8月20日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「電車利用率が下がっても、交通広告の価値は下がっていない」
緊急事態宣言発令期間に大きく利用率が下落した交通路線
2020年4~5月で緊急事態宣言が発令され、生活者の在宅率が高まった。一方、解除後もテレワークや休日の外出自粛など、在宅率は依然高い水準にある。特に、外出の減少とともに電車利用率が下落したことは明らかである。本レポートでは、コロナ期の交通広告を考える上で、路線利用率はどの程度下がったのか、本当に交通広告の価値は下がったのかを分析した。
図表1 交通路線利用率(週1以上)の推移
図表1は、2019年3月~2020年5月まで毎月の交通路線利用率(週1以上)の推移を見たものである。2020年3月まではほぼ横ばいで推移しているが、緊急事態宣言発令後は、大きく下落しており、2020年5月時では、38.6%とコロナ前の約7割まで減少している。また、週1以上の利用率のため、週5利用から週1利用の変化も加味すれば、より電車の利用は下がっていることが想定される。
交通広告の価値は下がっていない
交通路線の利用率が下がる、イコール、交通広告の接触率が下がる、ということだが、広告の認知率や広告効果も同様に下がっているのだろうか。
図表2 交通広告の広告認知率・広告効
図表2を見てほしい。図表2では、2019年4~6月をコロナ前、2020年4~6月をコロナ後とし、実際に出稿された交通広告42事例を対象に比較している。すると、電車利用率(=リーチ)の大きな下落と反し、広告認知率にほぼ差がない。また、KPIの増加効果を指す広告効果(リーチ×接触者あたり効果)を見ると、コロナ後の方が高い水準となった。接触者あたりの効果が増加傾向にあり、利用率の減少分を上回ったためだ。つまり、広告認知・効果は維持されており、交通広告の価値は下がっていない、ということができる。
これまで、満員電車などでの利用も多かったと考えられるが、コロナ後には空いた車内で座ることもできるため、広告に目をやる余裕も生まれたのではないだろうか。もしくは、交通広告はフリークエンシーの影響が大きくない可能性もある。
コロナ期に仕掛けるOOHマーケティング
認知率や効果が落ちていなくても、電車利用率が下がっていることは事実である。今後は、利用率の減少がテレワークによるものか、休日外出率の減少か、移動手段の変化か、何故かを路線別に把握することを推奨したい。そうすることで、ターゲットの路線利用状況に加えライフスタイルまで加味した、精緻なプランニングが可能になるだろう。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 森田光一 主任コンサルタント