2020年8月 6日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「緊急事態宣言解除後、頭打ちのテレビと定着のデジタル」
緊急事態宣言解除後に減少したテレビ視聴と微増を続けるデジタル利用
2020年5月25日に緊急事態宣言か解除されて、早2ヶ月か経過した。いまだ感染収束が見えない中でも、徐々に経済活動が再開されているが、生活者のメディア利用はどのように変化しているのか。コロナ期に入り大きく変化した生活者のメディア利用のその後を追った。まず図表1を見てほしい。テレビとデジタルの利用状況をコロナ期前の2019年3月と、コロナ期以降の2020年3月、4・5月、6月で比較した。テレビもデジタルもコロナ期に入り在宅率が高まることで、利用率が高まっていることは以前レポートした通りだが、2020年6月の最新データを見て見ると、前月と比較し減少しており、頭打ちの様相を見せた。
図表1 テレビ・デジタルの利用状況
緊急事態宣言が解除され在宅率が下がり始めたことにあわせて、テレビ視聴も減少し緊急事態宣言前の水準まで戻っていることが見て取れる。一方のデジタルは微増ながらも堅調に推移しており、宣言解除後でも下がっていない。利用ビークルの内訳を見ると、動画サイトや動画配信サービスの伸びがけん引しており、コロナ期に新たに動画視聴を試した層がそのまま定着したようだ。
特に女性で定着しつつあるデジタル利用
堅調に拡大するデジタル利用について、男女別に分解して主要広告サイトの接触数を見たものが図表2である。コロナ前の2019年3月では男性と女性の利用状況には差が見られたが、その後、コロナ期に入り男女差がほぼなくなっている。また、緊急事態宣言前後を比較すると、男性は微減しているのに対し、女性は伸長を続けている。この後の推移も確認する必要があるが、現時点では女性がデジタル利用の定着層として見ることが出来そうだ。
図表2 男女別・デジタル利用状況の推移
リーチ範囲を拡大するデジタルメディア
これまで見てきた通り、「動画視聴」と「女性」をキーワードにデジタル利用はコロナ後のメディア接触行動に定着しつつある。広告配信の際には、デジタルメディアでは、買い付けたimp量だけ出稿されるため、表示されるimp数が増えるわけではないものの、メディア自体の利用者
増により、これまでリーチできなかった層が減少し、リーチメディアとしての活用可能性が出てきたかもしれない。さらに、動画視聴が定着しデジタルリテラシーが高まり、デジタル広告が一般化することでテレビCMなどと同様に、「広告が邪魔」「ほぼスキップする」といった忌避態度に変化が起きることも期待したい。そうなれば、デジタル広告の低い広告認知率が改善されるなど、メディアとしての価値がさらに高まることは間違いない。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 森田光一 主任コンサルタント