2020年5月20日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「"おうちで過ごそう"で拡大するテレビ視聴、動画サイト利用」
1日30分の視聴が拡大したテレビ、特に若者における視聴が急増
緊急事態宣言下での外出自粛に伴い、「おうちで過ごそう」をかけ声に在宅での過ごし方を工夫している生活者も多いのではないだろうか。「料理を頑張ってみる」「今まで読めなかった本を読む」「家の中の大掃除・断捨離」など、これまでできなかったことをやってみたり、新しいことにチャレンジしてみたり、様々な過ごし方がある。
図表1 世代別テレビ視聴時間(1日当たり)
今回は、メディアの利用実態の変化について見てみよう。図表1はテレビの視聴時間の変化を整理したものだ。全体としては、昨年同時期と比べて、0.5時間(30分)の視聴が増加している。年代別にみると、20~40代の若・中年層の増加幅が大きい。一方、普段からよくテレビを見る50代については大きな変化がない。テレビの若者離れと言われて久しい中、若者の視聴増はうれしいニュースだ。アフターコロナ期においても、ある程度の外出自粛が要請される可能性が高く、今後も若年層のテレビ接触はある程度の水準を維持するものと考えられる。
勝ち組と負け組が明確になった動画視聴
デジタルメディアの状況(図表2)を見ると、利用率が拡大したものとして、twitter、Instagram、YouTubeなどのSNSがある。一方で、同じSNSでもFacebookの利用率はあまり変化がみられない。Netflix、amazonプライムなどの有料動画サイトも利用率が増加している。
図表2 デジタルビークルの利用率変化
テレビの視聴と同様に、"おうちで過ごす"時間が増えたことで、動画視聴のサイトの利用率が高まったと考えられる。また、元々利用率が高かったり、勢いのあるビークルがさらに利用を伸ばしたともいえる。この1年間のトレンドも含まれるものの、コロナ期を経て、ビークル間の格差がさらに広がった形だ。利用頻度別にみても、これまで使わなかった人が新たに利用したり、利用率の低かった人の利用が拡大するといったような、ライト層の動きが大きく反映されている。
アフターコロナではメディア利用はどうなるか?
今後は、コロナウイルスの感染拡大の収束とともに、現在のメディア利用状態は解消されていくであろう。しかし、新たに始めたSNSや若年層のテレビ視聴の高まりなど、これをきっかけに一部は今後も定着することも考えられる。大切なことは、アフターコロナの誰もが未経験の状況では、感覚によるマーケティングではなく、常にリアルタイムのデータとファクトから現状を把握・推察し、最適な施策を選択することが必要となるということだ。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 森田光一 主任コンサルタント