2020年5月12日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「食事だけでない...安心も届ける宅配サービス」
新型コロナへの不安感が強い人ほど、外食は減っている
新型コロナウイルス感染の急速な拡大への恐れや、緊急事態宣言による外出自粛を受け、『食事』における消費者の行動は変化してきている。本稿では、外食と食事の宅配サービスについて、消費者心理と行動について、NRIシングルソースデータから紹介したい。
ニュース等でも取り上げられているように、不要不急の外出自粛および店舗の休業により、街中は閑散としている。外食においても、新型コロナウイルス感染拡大前後で「以前より外食を利用しなくなった」人は64%と多い。新型コロナウイルスに対する不安感との相関をみると、不安感が強い人ほど、外食の利用が減った人が多い。新型コロナに対する不安感が強い人ほど外食を自粛している傾向が見られる。
図表 新型コロナウイルス感染拡大前後における
外食/食事の宅配サービス利用頻度の変化
「非接触」デリバリーが消費者に安心という価値を提供
一方で、食事の宅配サービスを利用する動きが出ている。宅配ピザや出前館、Uber Eats等の食事の宅配サービスの利用頻度は、新型コロナウイルス感染拡大前後において、「以前より利用するようになった」人が多い。また、新型コロナに対する不安感が強い人ほど、利用頻度が増えた人が多くなっている。
これは、新型コロナに対する不安感が強い人ほど、外食が減り、食事の宅配サービスが増えたという単純な関係ではない。食事の宅配サービスを"あえて"利用している人も増えてきていると考えられる。
この背景には宅配サービスを安心して利用してもらおうとする事業者の取り組みが寄与している。例えば、利用者が注文時にキャッシュレス決済を選択し、備考欄に「商品はドアノブに掛けてほしい」などの希望を記載することで、配達員がインターホンで到着を伝えた後に、利用者自身が非接触に商品を受け取ることが可能だ。また、キャッシュレス決済は、現金の受け渡しが発生せず、新型コロナに不安感が強い人も安心して利用できる。
キャッシュレス決済などの非接触オペレーションのメリットは利便性だけではなくなった。新型コロナをきっかけに「非接触」は消費者に安心という情緒的価値を届けるものになり、今後必須の価値観となるだろう。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 林裕之 主任コンサルタント