2020年4月28日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
「在宅生活で増加するチョコレートの消費」
保存食に加え、増えるチョコレート・菓子類の消費
外出自粛の中、食品や日用品の買い出しにスーパーマーケットに行くと、店頭陳列が歯抜けのようになり、意外な商品が品薄・売り切れになっているのが目に付く。バンドワゴン効果(「売れているようだから自分も買っておかなくちゃ!」)もあるだろうが、消費者は新型コロナウイルス感染拡大の状況下、特別な心理状態を持って商品を選択しているようである。今回は食品・飲料に絞って、その心理状態を考察してみよう。
図表 最近1ヶ月以内に購入したもの
(食品・飲料カテゴリ)
図表は昨年3月と今年3月に、シングルソースパネル回答者に最近1ヶ月に購入したものを聴取した結果だ。わかりやすく伸びているのはヨーグルト、果実飲料、野菜飲料などである。免疫力アップやひきこもりがちな生活での栄養バランスを意識して、といったところだろうか。非常時の買いだめ意識を反映しているのはミネラルウォーター、インスタント食品で、お茶などはそうした備蓄用途プラス、のどからの予防効果への期待もあるだろう。一方、缶コーヒーや炭酸飲料などは、仕事時・勉強時の飲用シーンの減少からか、やや減る形になっている。
在宅生活で「癒しの食」志向に
意外に減っておらず、むしろ増えていたのは、チョコレート、ガムなどの菓子類である。POSデータではビスケット・クッキーやスナック、ファミリーアイスなども伸びている。実はこれは世界的に起きている現象である。例えばアメリカでは缶詰などの保存食に加え、チョコレート、スナック菓子などの「コンフォートフード」(=食べることで幸福感・安心感が得られる食品)の売上が急増しているのである。今後、日本においてもさらに外出自粛が強化された場合、こうした「コンフォートフード」志向は加速すると予想される。今後、チョコレートやその他「癒しの食」の売上がさらに大きく伸びる日も近いのではないか。
自宅にこもらざるを得ずストレスがたまりがちな状況で、消費者は食べることでの癒しを求めているとの見方もできる。また、シングルソースパネルデータの別の分析結果からも、昨年と比べて閲覧が増加したサイトとして「Cookpad」などのレシピサイトが挙がってくる。自宅での時間が増えた今、おふくろの味やなつかしい味(コンフォートフードにはそのような意味もある)の再現や、一度作ってみたかった料理にチャレンジしてみる人も多いのだろう。
さて、そうなると気になるのはお腹まわりである。体を動かすことが減った上で、「癒しの食」に走るとなると...次に売上を伸ばすのは、ダイエット・シェイプアップ用食品やグッズかもしれない。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースパネルデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 松下東子 上級コンサルタント