Marketing Analysis Contest

マーケティング分析コンテスト

2011

審査結果・レポート公開中

実施レポート

マーケティング分析コンテスト2011 詳報

さまざまな視点から生活者の購買要因を掘り下げてデータを分析し、斬新なビジネスの法則や新しいマーケティング指標等の発見を競う「マーケティング分析コンテスト2011」の最終審査会が2011年12月20日、野村総合研究所本社にて開催された。5度目の開催となった今回は、過去にないハイレベルな作品が多く、最後までもつれにもつれた審査会になった。

今年度は、3月の東日本大震災を受け、コンテストを実施すべきかの判断に苦慮したが、学生の方をはじめ、開催を希望する声を多く寄せていただいたため、引き続き開催させていただいた。本震災により亡くなられた方々に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、ご遺族と被害を受けたすべての方々に、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。

そのため、大きなプロモーション活動を実施せずに開催する運びとなったが、仮エントリー及び本申し込みは昨年とほぼ同様。実際の応募数は、昨年の22作品よりも増加し、27もの作品が集まることとなり、大学を中心に本コンテストが根付きだしているようで、関係者並びにレポート提出者に改めて感謝申し上げたい。

今回も例年どおり11月中旬から6人の審査員による予備審査が行われ、14組の作品が最終審査に進んだが、この段階でも「今回は非常に選ぶのが大変であった」という嬉しい悲鳴が上がっていた。

最終審査会では1作品ずつ丁寧に議論がなされ、インプリケーションの優れたもの、分析プロセスの優れたもの、視点や仮説設定の優れたもの、論文として構成が優れたものなど、多面的な評価が行われた。その後、最終投票が行われたが、数回の投票を繰り返すこととなり、最後までもつれた審査会となった。そのため、通常であれば1作品となる“佳作”が2作品となることで各賞を確定することに落ち着いた。

最優秀賞には、総合研究大学院大学 複合科学研究科統計科学専攻 博士後期課程2年の本橋 永至氏による「消費者の購買実態とブランド異質性を考慮した広告効果測定」が選出された。非常に高度な分析を行っており、消費者異質性、ブランド異質性、購買実態異質性といった3つの異質性をモデルに組み込むのも目新しい。直接実務へ活用できるかは多少疑問が残るものの、示唆に富んだ結果となっている部分が評価された。

優秀賞には、キャビネッツドゥロワーズの郷 香野子氏による「企業サイトが消費者の態度変化に与える影響」が選出された。きちんとした理論に基づいて手堅い分析をおこなっており、研究としての完成度は最も高いとされた。シングルソースデータを十分に活用しており、実務的なインプリケーションも高く、最優秀賞と甲乙つけがたい作品であった。

佳作には、早稲田大学 商学部4年の進藤 啓太氏による「購買意向と購買行動の“ズレ”の研究‐「買う」と言ったのに「買わなかった」人たち-」と東京理科大学 工学研究科 経営工学専攻の佐藤 翔太氏の作品が選出された。進藤氏の作品は、分析としては標準的な手法であるものの着眼点が非常によく、学部生として粘り強く取り組んでいる部分が評価された。佐藤氏の作品は、分析手法、実務への応用という意味でも大変優れた作品であったが、最優秀、優秀賞を若干下回る評価であった。しかしながら受賞のレベルには十分に達しており、佳作としての受賞とさせていただいた。

審査会終了後、各審査員からは「昨年もクオリティが高かったが、今年はそれを大きく上回る作品が数多く寄せられた。膨大なシングルソースデータを闇雲に使うのではなく、仮説立案から分析ロジック、さらには実務への利用までよく練られていると感じた。受賞には至らなかったが最終審査に残った作品は、全てもう一捻りで非常にレベルの高い研究になると思われるため、是非今後も取り組んでいただきたい」ということで、総括した。

「マーケティング分析コンテスト2011」各賞受賞作品(敬称略)

Grand Prize

最優秀賞

  • 「消費者の購買実態とブランド異質性を考慮した広告効果測定」

    総合研究大学院大学 複合科学研究科統計科学専攻 博士後期課程2年 本橋 永至

審査員コメント

ベイズ統計学を用いて広告効果をこれまでになく掘り下げて分析することに成功している。2つのモデルの比較をしっかりとしている点が方法論として訴えてくる(阿部)

どのメディアを利用した広告が、どのような属性の消費者に効くのかを、消費者の状態ごとに分析しており、結果も興味深い。(守口)

受賞者のコメント

この度はこのような素晴らしい賞にご選出頂き大変光栄です。貴重なデータを分析させて頂きとても勉強になりました。メンバーを代表して御礼申し上げます。

First Prize

優秀賞

  • 「企業サイトが消費者の態度変化に与える影響」

    キャビネッツドゥロワーズ 郷 香野子

審査員コメント

きちんと理論に基づいたものを、多項ロジット、潜在クラスというきちんとしたモデルで実証し企業サイトの与える影響をしっかり捉えている。手堅い分析で体裁も良い。(清水)

シングルソースを十分に活用した分析であり、全メディアをモデルに投入し、企業サイトに限定している分析は筋が通っている。(塩崎)

受賞者のコメント

この度は選出頂き、誠にありがとうございます。今回、貴重なデータを使わせて頂けたことで、「WEBサイトの影響の考え方」に対して一つの提言ができたと思います。これを励みに今後もこのテーマを追求していきたいと思います。

Second Prize

佳作

  • 「購買意向と購買行動の“ズレ”の研究‐「買う」と言ったのに「買わなかった」人たち-」

    早稲田大学 商学部 4年 進藤 啓太

審査員コメント

分析手法としては特に目新しいものではないものの、目の付け所がよく、面白い結果が導きだされている。このような取り組みも評価したい(桑原)

受賞者のコメント

この度は身に余る評価を頂き、誠に有難うございます。試行錯誤の連続で、単純な分析ではありますが、なんとか形にすることができました。メンバー一同今回の研究を活かし、今後もより精進してまいります。ありがとうございました。

Second Prize

佳作

  • 「消費者属性を考慮した広告効果測定モデル~缶コーヒーを例として~」

    東京理科大学 工学研究科 経営工学専攻 佐藤 翔太

審査員コメント

着眼点が良く、高度な解析をきちんと行ったうえで結果を導き出している。また、その結果の評価を実際の広告内容と照らし合わせて考察する等、研究としての完成度が高い。(西尾)

受賞者のコメント

この度はこのような素晴らしい賞にご選出頂き、大変光栄に思います。また,貴重なデータを分析する機会を与えて頂き、大変感謝しております。有難うございました。

最終候補作品

  • 「ブランド選択行動の多様性に関する固定的要因と外部刺激の分析」

    静岡大学 情報学部 4年 原野 朱加

  • 「ロジスティック回帰分析を用いたTVCM効果測定と戦略提案~「影響を受けやすい商品」と「影響を受けやすい消費者」~」

    専修大学大学院 商学研究科 1年 鈴木 元也

  • 「企業と消費者 双方向の情報コミュニケーションにおける可視化とチャンス発見」

    電気通信大学 電気通信学部 鈴木 崇文

  • 「ELMによる情報発信者の情報処理プロセスの推定」

    筑波大学 理工学群社会工学類 4年 村上 守

  • 「シングルソースデータから見る“規範的消費者”~読書・料理・健康~」

    福岡大学 商学部 講師 太宰 潮

  • 「テレビ番組CMが商品の購買および認知に与える影響に関する研究」

    株式会社ビデオプロモーション 制作本部 土屋 智裕

  • 「スマートフォン市場における新製品投入による消費者の意向および実態の変化に関する研究」

    大阪府立大学 経済学研究科 1年 西口 真央

  • 「ブランドスイッチに影響を及ぼす諸要因の研究」

    上智大学 経済学部 4年 吉岡 公太

  • 「フィジクラスタリングを用いたアドボカシーマーケティングによるロイヤルティと顧客分類の関係」

    大阪府立大学 工学部知能情報工学科 4回生 中尾 索也

  • 「女性にとっての『購買』プロセスにおける経験価値分析 -商品の選択の積み重ねが女性にとって豊かな人生を形成していく-」

    電気通信大学 電気通信学部 4年 鈴木 実可