Marketing Analysis Contest

マーケティング分析コンテスト

2010

審査結果・レポート公開中

実施レポート

マーケティング分析コンテスト2010 詳報

さまざまな視点から生活者の購買要因を掘り下げてデータを分析し、斬新なビジネスの法則や新しいマーケティング指標等の発見を競う「マーケティング分析コンテスト2010」の最終審査会が2010年12月7日、野村総合研究所本社にて開催された。4度目の開催となった今回は、昨年に比べ応募作品数が急激に増えたため、大変活気のある審査会になった。

4月にエントリーを開始後、今回は以前から要望のあった“コンテスト説明会”を、6月に2度開催した。シングルソースデータの特徴やテーマ設定の指針、具体的な分析方法(統計ソフトでのデモを含む)をご説明した。

また、日本消費者行動研究学会やセミナーや講演などでのプロモーションの結果、111組のエントリーをいただき、22作品の貴重なレポートが集まった。歩留まり率が過去最高になるとともに、応募者のプロフィールを見ても、学生、教員、社会人と幅広く、バラエティに富んだ作品群となった。

11月中旬から6人の審査員による予備審査が行われ、9組の作品が最終審査に進んだ。最終審査会では1作品ずつ丁寧に議論がなされ、インプリケーションの優れたもの、分析プロセスの優れたもの、視点や仮説設定の優れたもの、論文として構成が優れたものなど、多面的な評価が行われた。その後、最終投票が行われたが、甲乙つけがたく、熱戦の中、各賞が確定した。

最優秀賞には、関西大学商学部 矢田勝俊研究室の金東賢氏による「イノベータ理論に基づくスマートフォン市場成長期の顧客特徴抽出と販売戦略の提案 -クリークを用いたXperiaの購入プロセスの解明 -」が選出された。目的変数の設定の仕方に優れており、グラフ構造からクリークを抽出する手法の目新しさ、さらに若干の飛躍はあるものの販売戦略まで提言するなど、実務に繋げようとする姿勢も評価された。

優秀賞には、ロチェスター大学サイモン校のMBAを卒業し、現在、国内の銀行に所属する川嶋浩司氏による「メディア接触と個人購買選択行動の関係 -多項選択モデルを用いた購買確率の変化に関する分析-」が選出された。非常に練られたモデルを構築し、パラメータ推定、シミュレーションによる効果検証というようにしっかりと展開されており、最優秀を最後まで争った。「ここまでできるのであればインプリケーションにもう一歩踏み込んでほしい」ということで優秀賞になったが、完成度という意味では最も評価されていた。

佳作には、福島大学経済経営学類の清水麻衣氏、佐藤舞氏による「コミュニティサイトへのアクセスに影響を及ぼす個人属性要因の研究」が選出された。文献レビューを含め、非常に丁寧に分析しており、消費者価値観のクラスター分析の中では、比較的よくできている。導きだされた示唆はあまり面白みがないが、これが大学3年生の作品という意味で、非常に評価が高かった。

審査会終了後、各審査員からは「応募が増えたとともに、作品のクオリティも非常に高かった。もう少し時間をかけ検証し、インプリケーションが得られれば、学会に出せるレベルのものも見受けられた。分析手法の多様性だけでなく分析の視点の多様性が増えたのは、審査していて大変楽しかった。同じデータを使っているにも関わらず、着眼点や粘り強さ、工夫の仕方によってここまで論文は変わってくるのは大きな発見であったし、我々も大変刺激になった。是非、来年もこの膨大なデータと格闘してもらいたい」ということで、総括した。

「マーケティング分析コンテスト2010」各賞受賞作品(敬称略)

Grand Prize

最優秀賞

  • 「イノベータ理論に基づくスマートフォン市場成長期の顧客特徴抽出と販売戦略の提案 -クリークを用いたXperiaの購入プロセスの解明 -」

    関西大学 商学部 矢田勝俊研究室 4回生 金東賢

審査員コメント

PLCに着目して受容している消費者像を明らかにしようとする点はユニークで興味深い。また、その結果として具体的な販売戦略が提示できている点も評価できる。(西尾)

分析手法は新しいことを取り入れてみた、という感じで疑問が残るが、意思決定の段階が進んだ人という視点がいい。また当該機期間発売された商品を対象としているのも目の付け所がいい。(清水)

受賞者のコメント

選出頂き、誠にありがとうございます。矢田先生と中原先生のお力があってこその作品ですが、私の意見も取り入れて頂いたのでやりがいがありました。来年社会人になってからこの経験を活かしていきたいと思います。

First Prize

優秀賞

  • 「メディア接触と個人購買選択行動の関係 -多項選択モデルを用いた購買確率の変化に関する分析-」

    ロチェスター大学 サイモン校 MBA卒 川嶋 浩司

審査員コメント

モデルを構築し、パラメータ推定、シミュレーションによる効果検証というように、論文としてしっかりしている(桑原)

カテゴリ、商材と階層に分け、入れ子型のロジットモデルなどを利用するなど、分析手法に工夫がみられる。(守口)

受賞者のコメント

選出頂き大変光栄に存じます。今回は、MBAで得た知識を実際の事例で適用してみたいと考え応募させて頂きました。実践的なデータを取り扱う貴重な機会を頂き、大変感謝しております。どうも有難うございました。

Second Prize

佳作

  • 「コミュニティサイトへのアクセスに影響を及ぼす個人属性要因の研究」

    福島大学 経済経営学類3年 清水 麻衣、佐藤 舞

審査員コメント

インターネットに限定した分析になっているのが残念だが、消費タイプと年代をベースに各サイトの利用などを分析しており論文としてしっかりしている。(塩崎)

分散分析の技法を使いながら、非常に丁寧に分析している。結果も示唆に富んでいる(阿部)

受賞者のコメント

この度はこのような素晴らしい賞にご選出頂き、大変光栄に存じます。本格的な分析は初めてで何度も躓きましたが、なんとか形にすることができ、チーム一同大変嬉しく感じております。本当に有難うございました。

最終候補作品

  • 「シリーズ型プロモーションの効果 -Big Americaキャンペーンの事例から -」

    立正大学 経営学部 准教授 井上 淳子

  • 「複数メディアへの接触パターン別消費者と消費者特性の分析」

    東京理科大学 工学研究科 助教 朝日 弓未

  • 「広告出稿による消費者の購買行動の遷移予測」

    慶應義塾大学大学院 理工学研究科 1年 岸田 雄也

  • 「真のTVCM接触を測るための消費者の意識・行動変容分析」

    ジェイアール東海エージェンシー 営業四部 チーフ 高木 香織

  • 「テレビCMに購入効果はあるのか~ソフトドリンク市場での有意性について~」

    専修大学 商学部 3年 皆川 祐希

  • 「テレビCMが購買行動に与える効果」

    東京工業大学大学院 社会理工学研究科 木本 健一