2018年9月20日
デジタル広告は信頼できる?
デジタル広告が信頼できるという人は、全体の13%
さて、2018年は広告業界について大きな節目を迎える年となりそうです。その原因は、デジタル広告費の売上が、テレビ広告費の売上を初めて越える(グローバル推計)、と予測されているためです。急激に拡大を続けるデジタル広告。今回はそのデジタル広告に対する生活者の"信頼性"について深く分析してみましょう。
まず、デジタル広告の信頼性について、テレビ広告と比較してみました。
デジタル広告とテレビ広告の信頼度
どちらかが信頼できるのか、という質問をすると、どちらも信頼できない、という人が3割いるものの、テレビ広告が信頼できると答えた56%に比べ、デジタル広告が信頼できると答えた人はわずか13%に留まっております。さらに、この結果について、性年代での違いがあるのかどうかも、確認のために集計しておきましょう。
デジタル広告とテレビ広告の信頼度(性別、年代別)
どちらも信頼できない、という人を除いて、テレビ広告とデジタル広告の違いをみると、女性より男性、高齢より若い人のほうがデジタル広告への信頼は厚いことが分かります。とはいえ圧倒的多数で、テレビ広告のほうが信頼されているようです。企業が広告にかけるお金は同じくらいになってきたにも関わらず、生活者の反応にこれだけ大きな違いがでるのはなぜなのでしょうか。
デジタル広告を見た後、実際に行動する人は28.3%
それでは、その信頼度の低いといわれる"デジタル広告"を見た後に、どのような行動をする人が多いか、確認してみましょう。
デジタル広告を見た後にとる行動
すると、デジタル広告を見たあとに、商品やサービスをよく買ったり利用したりする人は、全体で3.1%。たまに買う人まで入れると約1割。買うまでいかなくても、調べるなど実際に行動する人まで入れると、28.3%と全体の3割程度になります。一方で、名前を覚えるようなこともほとんどない、という人も約5割いますので、"伝える"という目的での広告としてはなかなか厳しいところでもあります。
デジタル広告の"ターゲティング"と"信頼性"の関係
デジタル広告の特徴として、ターゲティング広告ができる、という点があります。個人個人のWebサイトの行動履歴やサービスへ登録した属性情報などにより、商品やサービスに関心のある人に広告が届けることができる、というものですが、生活者はどのように感じているのでしょうか。
表示されるデジタル広告に対する自分の興味
自分の興味のある広告表示されるかを調査すると、興味のある+やや興味のある、で40.2%。興味がない+あまり興味がない、で59.8%となっています。アンケートベースなので、多少考慮してデータをみるべき点はありますが、半数以上の人が、自分に興味がないものが表示される、と"感じて"しまっているのは事実のようです。
なぜ、このように感じられてしまうのかを考えるため、先ほどの"広告への信頼度"とクロス集計をしてみると、興味深い結果が現れました。
表示されるデジタル広告に対する自分の興味(広告への信頼度別)
デジタル広告を信頼できる、と答えた人の約6割が、興味のある広告が表示される、と回答しているのに対し、デジタル広告が信頼できない、と答えた人は3割程度しか興味のある広告が表示されないと回答しています。因果関係があるかはこれだけでは言い切れませんが、少なくとも、"デジタル広告に興味のないものが表示される"と"デジタル広告は信頼できない"という間に相関関係はありそうです。
デジタル広告の信頼度を上げるための3つのポイント
前項にて、自分に興味のない広告が表示されすぎると、デジタル広告への信頼度が低くなる、という、ターゲティングの課題を取り上げましたが、それ以外にデジタル広告への不満点として、どのような項目が挙げられているのでしょうか。
デジタル広告で気になる課題
すると、興味のない広告が表示されるや何度も表示されるという、"1.配信"に関する項目以外にも、いっとき話題になった、ステマややらせ投稿、記事に見せかけた広告など"2.内容"に関する項目も挙げられています。
ただ、これら以上に『誤ってクリックさせるような仕組み』、『広告を閉じにくい』、『画面が占領される』、『スクロールしても付いてくる』、といった、広告そのものの"3.仕組み・仕掛け"に関する問題点も数多くあげられています。生活者をだますような広告は、掲載している企業の信頼感を損なう可能性も高く、広告することが逆効果に繋がる恐れもあります。拡大を続けるデジタル広告ですが、今後の健全な発展のためにも、改めて業界全体でルール化することが必要な時期まで来ているのではないでしょうか。
出典)野村総合研究所 2018年9-10月期シングルソースデータ(関東エリア 20-59歳:N=2,955)(松本 崇雄)