テレビCMと同一素材をデジタルでも流すべきか

テレビCMと同一素材を動画広告で流した事例

SNSやYouTubeなどのデジタル広告で、テレビCMと同一クリエイティブを流すべきか悩まれる方も多いのではないか。これまでの広告効果検証の結果から言えることは、テレビCMと同じ素材をそのままデジタルに流用する手法は失敗事例も多いということだ。

下図は食品会社Aの事例になるが、テレビCMと同一素材をデジタル動画広告で出稿した場合、テレビCMと比較してデジタル動画広告ではKPIへの効果が著しく低下していることがわかった。また広告の重複認知率を見ても、デジタル動画広告の認知者のほとんどがテレビCM認知者と重複しておりデジタル動画広告の出稿による認知拡大もほとんど果たせていないことがわかった。

テレビCMと同一素材を動画広告で流した際の認知状況と効果(食品A社)

広告効果の因数分解

生活者に対する広告の効果は、広告の出稿「量」とその広告の「質」に大きく影響を受けていると考えられる。「量」はプロモーション予算との兼ね合いから簡単に増やせるものではないが、「質」は制作等の工夫で向上が見込めるものである。

「質」の要素としては①広告のクリエイティブ、②広告の表示形態、③広告の接触状況の3つが挙げられる。テレビの前で視聴するテレビCMとは異なり、デジタル広告はスマホでの視聴がほとんどであることから、③の接触状況は様々なケースが考えられる。そのためターゲットの接触時間や状況を把握しながら、それに合わせたデジタル専用のクリエイティブ制作が必要となる。

接触状況を想定したクリエイティブの出稿例

広告への接触状況を想定した広告出稿の例として、飲料メーカーの広告を紹介したい。仕事から帰宅した時間帯の社会人に対して、広告に出演するタレントと一緒にお酒を飲んでいるような表現で広告を作成し、配信している。

接触状況と訴求例については下図の表にまとめてあるように、様々な活用方法が考えられる。広告配信先であるターゲットが、「いつ」、「どのような状況で」広告を視聴する可能性があるかを把握し、デジタル広告のクリエイティブ制作・配信方針に活かすことでデジタル広告の効果を高めることができるだろう。

飲料メーカーの出稿事例

業務における進め方のポイント

デジタル広告の出稿に際しては、テレビCMと同一素材をそのまま配信することはデジタル広告の効果を高めたり、認知を広げることに有効ではないことが多い。デジタル広告の活用にあたっては、ターゲティングができることの特徴に加えて、様々な利用シーンが想定されることをふまえて、ビークルの選定だけでなく、そのビークルがいつ、どのような生活シーンで利用されるかを調査し、その生活シーンに馴染む広告を制作し、配信することが求められるだろう。デジタル広告のクリエイティブ制作にお悩みの場合は、プロモーションターゲットが日々どのような生活シーンでビークルを利用しているかを検証してみてはいかがだろうか。

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