コネクテッドテレビ(CTV)の利用実態

コネクテッドテレビの現状

コネクテッドテレビ(CTV)の保有率・利用率は、ここ数年で上昇が続いており、2022年には保有率が50%を超えた。また、CTVでインターネットを利用した割合もコロナを境に上昇しており、2022年には約3割まで上昇している。ターゲティング配信も可能であるCTVはその広告市場規模も上昇しており、2019年から1630億円拡大している

図1:CTVが注目される背景

CTV利用の定義を、スマートテレビや外部機器を介してインターネットに接続できるテレビを用いてインターネット動画(YouTube、ABEMA TVなど)を視聴しているとした場合、CTVのリーチ率は31.5%であり、地上波テレビの利用率の89.6%の約三分の一程度の水準にとどまっている。また、この31.5%にはYouTubeプレミアムやNetflixなど広告配信枠の無いサービスの利用者も含まれているため、「広告媒体」としてのリーチ率はさらに低い

図2: CTVの定義と従来のテレビとのリーチ率比較

出所)公開情報・ NRI Insight Signal調査(関東一都六県在住の生活者を対象としたWeb調査、各回約3,000ss)より作成

利用頻度と利用時間をテレビでの地上波放送とCTVでの動画視聴で比較すると、地上波テレビのほうが高頻度利用者や長時間視聴者の割合が多い。20-30代の若年層に絞ると、その差は縮まる傾向にあるが、傾向は変わらない。

図3: CTV利用の実態(利用頻度は生活者全体・利用時間は各媒体利用者に絞って集計)

出所)図3: CTV利用の実態(利用頻度は生活者全体・利用時間は各媒体利用者に絞って集計)

CTVで動画を視聴する場合は、スマホでの視聴と異なり、本人以外のアカウントで視聴する人が4割近く存在している。そのためログイン情報をもとにした配信は、本来のターゲットではない層に対しても広告が配信されている可能性が高くアカウント情報を基にしたターゲティング精度には課題があると考えられる。例えば、女性40代に対してアンチエイジング化粧品の広告配信を行っても、実際に広告を視聴している人はターゲットに該当しない同居家族であるケースも多く存在していると考えられる

図4: CTVのアカウント利用状況と視聴状況のイメージ

出所)NRI Insight Signal調査(関東一都六県在住の生活者を対象としたWeb調査、各回約3,000ss)

CTVの活用方法

CTVでの動画視聴はスマホとは異なり「複数人での視聴」が行われることがあり、約2割のユーザーが家族と一緒に動画を視聴していると回答している。またCTVの利用シーンは「食事中」が多く、他のデバイスと大きく異なる点である。そのため家族での団らん時間に話題になりやすい「子供教育・商品」、「家族旅行」、「結婚等のライフイベント」に関するサービス・商品に関連する広告を発信することが有効であると考えられる。またターゲティングについても、アカウント情報に紐づいたターゲティングではなく、コンテンツの特性から視聴者を予測する「コンテンツターゲティング」のほうが有効であると考えられる。この方式はYouTube等で実装されており、積極的な利用が推奨される。

図5: CTVの利用シーンと活用方針のイメージ

出所)NRI Insight Signal調査(関東一都六県在住の生活者を対象としたWeb調査、各回約3,000ss)

CTVはスマートフォンやPC/タブレット端末と比較して広告をスキップして視聴する割合が低い。CTVは画面が大きいことで、食事をとりながらやスマホを触りながらなどの「ながら見」しやすい環境であることが、広告をスキップしにくい要因だと考えられる。そのためデジタル広告の問題点である広告に対する嫌悪感を感じにくく、ブランド棄損につながりにくい可能性がある。

大画面での配信であることを活かして、食品系の商材であれば「おいしさ(シズル感)」、旅行や車などであれば「美しさ・かっこよさ」を表現したクリエイティブを制作し、配信することが有効であると考えられえる。

図6:CTVで配信すべきクリエイティブのイメージ

出所)NRI Insight Signal調査(関東一都六県在住の生活者を対象としたWeb調査、各回約3,000ss)

CTVの利用実態

  • 利用率・視聴時間ともに、地上波テレビにはまだ敵わない。
    • 広告出稿の観点からも、地上波テレビがリーチの面で圧倒的。
  • 家族でアカウントを共有して動画視聴する人が、3~5割程度存在。
    • ログイン情報を元にターゲティングを行った場合、想定ターゲットとは全く異なる層にリーチすることが避けられず、スマートフォンなどパーソナルデバイスで視聴される場合と比べ、ターゲティング精度は低くなる。

CTVを活用する際のポイント

  • ログイン情報を元にしたターゲティングよりも、**視聴コンテンツを元にしたターゲティングが有効。
    • 但し視聴コンテンツも、「世帯単位」でのログであることを念頭に。
  • 団らんの場でコミュニケーションを誘発するような広告が、スマホよりも効果的に働く可能性あり。
    • 複数人で視聴されるシチュエーションが多いことから、視聴しながら話題にしてもらうチャンスあり。会話を通して興味を持たれるような工夫を。

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