2021年12月22日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」
コロナ禍で縮小した消費、はじけるきっかけは目前
ワクチン接種完了率はじき7割に、コンビニや嗜好品チャネルの利用頻度が戻りつつある
2021年10月17日時点で、ワクチンを必要回数接種完了した人は67.4%、1回以上接種した人は75.8%となり、「国民の多数」が接種したと言える状態になった。インサイトシグナル調べでは、ワクチンを1回以上接種した場合、未接種の人と比べてコンビニエンスストアやデパート、本屋、大型家庭電器店、ファストフード店などへの嗜好品チャネル、渋谷、池袋、新宿などのショッピング街の月間利用頻度が、コロナ禍前の水準に戻りつつある(年代別接種率の違いを制御するため同一年齢層にて比較)。特に、コンビニエンスストアやファストフード店などは、「これまで我慢していた分」むしろコロナ禍前より一時的に頻度がアップする、いわゆる「リベンジ消費」が観測されている。
外食、レジャー・イベント関連の外出、旅行は政府のお墨付きで回復
ワクチン接種が進めば、チャネル利用以外、例えば旅行、レジャーなどの行動も回復するだろうか。図1はコロナ禍で減少した行動に対し、「どのようなタイミングで再び増やそうと思うか」を質問した。
図1 コロナ禍によって頻度が減った行動について:
どのようなタイミングで再び増やそうと思いますか。
※「減った」と回答した行動について質問
まず、すべての項目で安定して多かったのが、「自分の居住地や外出先の感染者数が減ったら」で、感染者数は主要なバロメーターになっていることがわかる。その意味では、感染者数が減り続け、連日千人未満となっている最近では、再始動を始めた消費者も多いだろう。
ただし、旅行やレジャー・イベント参加などについては、「政府が終息宣言を出したら」という回答が多数を占める。政府の「お墨付き」が出ればよし、とのことだが、先のGoToキャンペーンについても、金銭的メリットもさることながら、こうした許され感も行動を後押ししていたのだろう。政府は現時点ではGoToの再開には慎重な姿勢を示しているが、山際経済再生相は現在の感染状況を受け、「11月には制限なく生活できる」との見通しを示しており、こうした政府の見解が周知されれば、消費・余暇活動の再開は近いだろう。
リベンジ消費は旅行・レジャー。再始動に備えて自己投資やメイクアップ品などステータス上げ消費も
同じくインサイトシグナル調べで、前項の条件が整った場合に「どれぐらいまで増やしたいか」について尋ねたところ、「コロナ禍前の水準より多くする」などのリベンジ消費が起こりそうなのは、若者を中心に「海外旅行」「国内旅行(宿泊)」などの旅行系であった。一方、外食や外出用の買い物などは「以前の水準には戻らない」の割合が多い。ただし、費目別に見ると、スキンケアや通信教育などの自己投資やメイクアップ品など、コロナ禍後の再始動に向け、自分のステータスを上げる消費行動は増える見込みである。「おうち時間充実」から「グルーミング(自分磨き)」へ、消費の重点もコロナ禍明けに向けてシフトしている。まさに、ウィズ/ポストコロナ禍に向けたマーケティングのタイミングである。
ようやく消費再始動の光が見えてきた昨今ではあるが、現在の収束についても明確な原因は特定されておらず、第6波への懸念も依然強く残っている。気を緩めることなく、マスクその他衛生行動など感染拡大防止への努力を怠らずに、この再始動の芽を国民全体で育てていけるよう、企業側でもさらなる啓蒙活動を行っていきたい。
出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ
NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 上級コンサルタント 松下東子