2021年12月 8日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

若年層へのカーシェア普及のカギは2種類の「安心」

カーシェアの利用意向はコロナ前よりも上昇

 2000年代から取り沙汰されている「若者の車離れ」の大きな要因の一つに、車の購入代金や維持コストの高さが挙げられる。そんな中、 「車は持てないけれど乗りたい」生活者の味方となるのがカーシェアリングサービス(以下カーシェア)だ。会員登録をした人が利用したいときだけ車を借りて使うサービスだが、非接触が是とされるコロナ下の社会でも、カーシェアは受け入れられているのだろうか。

 図1にある通り、カーシェアの利用意向はコロナ前よりも、直近の数字の方が高くなっている。コロナ禍がなければもっと伸びていた可能性はあるが、少なくともこの2-3年で、本調査の対象エリアである関東一都六県においては、カーシェアの潜在的な需要が著しく落ちたということはなさそうだ。ちなみに、20代は全体に比べ利用意向がさらに高い。

図1:カーシェア利用意向
(「ぜひ借りたい」+「借りたい」の合計)
(コロナ前: 全体N=4,08820N=583/直近 全体N=3,37120N=586marketing_v62_1.jpg

 自動車メーカーなど「車を売りたい」立場からは、「買わなくてもカーシェアで充分」という生活者が増えてしまうことは脅威だろう。しかし実際は図2にある通り、カーシェアの利用経験者と未経験者で、今後の自動車の購入意向に大きな差はない。むしろ20代のうちにカーシェアで自社の車の良さを体験してもらい、子どもの誕生など車の必要性が高まるライフステージで自社製を選んでもらう、といった青田刈りの機会になる可能性もある。

図2:非保有者の自動車購入意向marketing_v62_2.jpg

若年層のカーシェア利用促進には、衛生面の対策だけでは不充分

 では、若年層にカーシェアをより普及させていくには今後、どのような対応・対策が必要になるだろうか。

 図3は、カーシェアを「利用したくない」と答えた20代に、その理由を訊いた結果である。昨今の世相を踏まえ、「衛生面に不安がある」 「不特定多数の人が使った車に乗るのが嫌」の割合が高いのは予想通りとして、それらを押さえて最も高かったのが、「汚れや傷をつけないようにするなど、気を遣って乗らないといけない」であった。

図3:20代がカーシェアを使いたくない理由
(図1のいずれかのカーシェアで車を「借りたくない」と答えた20代に聴取/N=221marketing_v62_3.jpg

 若年層は運転に不慣れで自信がない人も多い。シェアである以上「気遣い」の心理障壁を払拭することは簡単ではないが、衛生面での安心感と併せ、万一の際の保障やトラブル対応などの面からも安心を担保していくことが、まずは必要となるであろう。

出所)NRI インサイトシグナル シングルソースデータ
(関東一都六県在住の男女
2069歳/断りがない場合、調査時期は20219月)

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 主任コンサルタント 白井雄志

NRIマーケティングサイエンスコンサルティング部では、シングルソースデータによる生活者の行動を毎日継続的に収集しております。お客様のテーマや課題にあわせて、データの追加調査や分析をおこない、マーケティング課題解決のお手伝いをいたしますので、こちらより、お気軽にお問合せください。